台風10号は熱帯低気圧に変わり、危険な災害の峠は越えたようだが、各地に大きな爪痕を残した。被災した方々には、心からお見舞い申し上げたい。たまたま、我が家は無事だったが、これからいつ、こうした猛烈な台風に襲われるか分からない。そんな恐怖におびえた数日間だった。

 瞬間風速60メートルなどという、一昔前には想像もつかなかった狂風と、1時間に数百ミリという豪雨の原因は、やはり地球の温暖化としか思えない。日本近海の海水温は30度ぐらいに達していて、まるで海という「大鍋」で熱せられた海水から、いつも大量の水蒸気が天に向って昇っている状態にあるのだろう。

 その水蒸気が雲の渦になり、台風になり、上空で冷えた水蒸気は大量の雨になって降り注ぐ。我が家のある地域にも断続的に雨が降り続いたが、半端ない勢いだった。屋根に雨が当たる音はゴーという不気味な轟きにしか聞こえなかった。これはもう雨などという言葉では表せない。まさに「滝」の下にいるようだった。その音を聞きながら私は、悪い人間を滅ぼすために神が40昼夜洪水を続けたという旧約聖書「創世記」の物語「ノアの方舟」を思い出し、暗い気持ちになった。

 気象学者によれば、これからこうした「スーパー台風」が日本に上陸するリスクは高まるらしい。だから夏は、それをいつも心配する「憂鬱な季節」になるのだろう。

 さて、いまテレビや新聞では、自由民主党の総裁選、立憲民主党の代表選が報道されている。しかし、私の知る限り、候補(予定)者のだれもが地球温暖化対策とその防災対策を語らない。まるで唯一の被爆国・日本が「核の傘」アメリカに遠慮して「核兵器禁止条約」に不参加なように、温暖化対策に対しても、景気や経済団体に遠慮してか、世界の先頭に立って進める気がない。そう思えてくる。

 しかし温暖化は「ゆでガエル」のように、人類いや地球そのものを死に追いやる。海に囲まれ、温暖化の影響が他国より大きい日本こそ、温暖化対策を大声で訴え、自国でも率先して進めるべきだ。いま生きている人のためだけではない。これから生まれてくる子供たちが少しでも安全に生きていけるように、手を打つべき「待ったなしのデッドライン」が、すぐそこに来ていると思う。  (2024.9.2 風狂老人日記)