昨年10月から始めた児童館の将棋教室が、初めての新学期を迎えた。何のことかと思う読者もいると思うが、小学6年生が中学に上がっていなくなり、ピカピカの1年生が、仲間入りするということだ。

 この水曜日は、見学者も含めて、10人ぐらい集まった。10月から半年続けてきている新2年生の男の子SちゃんとEくんも含まれている。そのほかは、ほとんど1年生だ。駒の並べ方を知らない子がほとんどだったので、知っている子に教えてもらうように頼んで、その間にSちゃんとEくんに、駒の手筋について教えていた。教室では「ベテラン」といえるSちゃんとEくんは、駒の動かし方はすっかり覚え、私との6枚(飛、角、桂2枚、香2枚)落ちの対局では、勝ちに近いところまで迫る力がついている。

 手筋(てすじ)というのは、駒の上手な使い方、言わば決め技。もう少し説明すると、「桂馬のふんどし」、「香車の田楽(でんがく)刺し」などという駒の機能をうまく使った有効な攻撃法のことだ。将棋をやらない読者にはよく分からないだろうが、興味のある読者は、ぜひ将棋を始めることをお勧めする。

 10分ぐらい手筋のレクチャーを二人にしていたら、急に騒がしくなった。1年生たちがふざけて騒ぎ出したのだ。「ちょっと、お勉強しているから静かにして!」と注意した。それで、いったんは静かになった。

 レクチャーを続けていると、Eくんが「みんな、いなくなったよ」と言う。後ろをみると、もぬけの殻だ。そのうち、いなくなった1年生たちが、廊下を走り回って、追いかけっこを始めた。黄色い喚声(かんせい)が児童館の隅々までこだましている。児童館の先生2人が「静かにしなさい!」と止めようとするが、もう止まらない。駆け回るのがうれしい年頃だから、しかたないのだが…。

 せっかく将棋教室にきてくれた1年生を、もう少しうまく引き留める術(すべ)はなかったのか。将棋が退屈だと思われたら負けだ。以前にも「1年生は集中力がまだ足りない」と書いたことがあるが、将棋という世界に興味をもってもらう、一工夫が必要だと思った。新米先生は反省、反省しきりである。 (2024.4.19 風狂老人日記)