昨日(10日)、以前に住んでいた千葉県船橋市飯山満町に久しぶりに出かけた。隣家の住人が引っ越すに当たって、土地の境界線の測量に立ち会いを求められたからだ。私はここに通算10数年住んでいた。職場のある大手町まで列車1本で行け、通勤時間も1時間かからないので便利だった。ただし、料金は片道660円と高い。会社が支給してくれていたから気楽なものだったが…。

 まぁ、その話はどうでもいいのだが、私が住んでいたころは、東葉高速線の飯山満駅前には小山があって、鬱蒼(うっそう)とした林に覆われていた。そのためか、近くの公園や堀では、啄木鳥(きつつき)や梟(ふくろう)、五位鷺(ごいさぎ)が目撃された。え、こんな所にも野生の動物がいるのか、と引っ越したばかりのときは驚いたものだ。その中には、狸(たぬき)もいた。

 終電で仕事から戻ってくると、駅近くを「犬」が一匹、とぼとぼと歩いている。そう思った。しかしどうも、様子が違う。月明かりで目を凝らすと、尻尾が長いし、どうも顔つきが丸い。狸だ。狸は逃げる様子はなく、こちらが歩くと狸も歩くが、私が立ち止まると、振り返って私の方を見る。それが人なつっこく思えて、私も何度も立ち止まった。家の近くまで来るとどこかに消えたが、エサでもやればよかったかなと思った。主に夜行性だから、エサを探して徘徊していたのだろう。

 その後も何度か狸を見ているが、夕方だったか、駅近くの小山の近くで狸の親子を目撃した。かわいい子狸だった。あ、ここに住んでいたのか? 竹林や雑木林が覆う小山は、巣を作るのに格好だと思った。

 そして、昨日。駅に降りたって目を疑った。小山がほとんど裸になっているではないか。木々は伐採され、いくつもの杭が打たれ、いかにもこれから、住宅か施設かが建設されそうに準備されている。こうなると、もう狸の親子は住んではいられまい。

 1994年にスタジオジブリが公開した「平成狸合戦ぽんぽこ」(高畑勲監督)を思い出した。野山に住む狸たちが、開発を進める人間と戦うアニメだが、ここでも狸たちは追いやられている。狸ばかりじゃない。啄木鳥や梟や五位鷺たちも、もういないかもしれない。自然がどんどん無くなるのは人間にとってもプラスにはならない。みんなそれを分かっているのだが…。          (2024.4.11 風狂老人日記)