児童館での将棋教室が2カ月を経過した。手探り状態で始めたが、子供たちの旺盛な吸収力に助けられて、なんとか順調に続けられている。
最初は10人ほど集まったが、今は5~6人に落ち着いている。メンバーも固定してきた。このメンバーたちは駒の並べ方や動かし方は身につけて、早くもゲームを楽しむ段階に入りつつある。これがしっかり定着して、将棋が持つ本来の醍醐味(だいごみ)を味わえるまでには、いくつかのハードルが待ち構えている。
その1つは「詰み」を覚えること。いまは「王様を捕れば勝ち」という目標に向かって、駒を進め攻撃していく段階だが、王様を捕るだけではなく、「逃げられなくする」ことが「詰み」で本当の勝ちだ、ということを理解させるのは難しい。
もう一つは「大局観」。これはアマ、プロを問わず永遠のハードルだろう。相手の玉と自玉の安全度を確認し、攻めるのか守るのか。これがある程度できるようになれば有段者の域に達する。
教室では最初の10分程度、対局する前にテーマを決めて勉強させている。これまで勉強したテーマは①王手をかける②王手飛車などの両取りをかける③相手より多い駒(勢力)で攻める④と金などの成り駒を増やす⑤安い駒(歩や香)で高い駒(金や飛車)をとる。
これからは、いよいよ⑥飛車・角と小駒の連携⑦詰みとその方法⑧王の守り方と逃げ方⑨駒別のさまざまな手筋ーなどを学んで行かせたい。
しかし、あまり焦ることなく身につけてほしい。1~2年生は、まだ幼すぎて集中力がない。飽きてくるとゴロゴロ寝転んだり、ケンカしたりする。ケンカはもちろん止めるが、そうやって少しずつ慣れていけばいいと思う。
集中力が出てくる3年ぐらいからしっかり覚えて、卒業して児童館を離れる6年生まで3~4年間毎週1回以上指せば、それだけで150~200局だ。基礎を十分に積むだけの時間がある。そうすれば、「一生物」として将棋を愛好する人間になるはずだ。
教室をやっていて、最も楽しいのは、子供たちの個性。駒の損得など考えずにどんどん攻めてくる子がいると思えば、慎重に守りを固めて全然攻めてこない子もいる。じっと考えて動かない子。「先生、先生」とうるさいほど質問してくる子もいる。子供たちの個性はそれぞれが際立っている。「なんでこんなに個性的で面白い子供たちが、大人になるとつまんないヤツになってしまうのか」と、心の中でつぶやく。
教室では、できるだけ個性を尊重し、個性が発揮される将棋を教えたい。でも、それがもっとも難しい。 (2023.12.1 風狂老人日記)