自民党がまた、常套手段の「減税」をちらつかせている。物価高で苦しむ国民の暮らしを支援するというのが大義名分だが、年内にもあるとみられる総選挙に向け、「有権者へのばらまき」とみる向きは多い。まったなしの少子化対策や、後期高齢者が増えて医療費がかさむ「2025年問題」など、むしろ増税が必要な時だ。集票狙いの甘言で国民がだまされるはずもない。むしろ、「そんな小細工を弄せず、地に足着けて喫緊の課題にしっかり取り組んでほしい」「金がかかっても、『目に見える成果』を出してもらいたい」そう思っているのが国民の大多数ではないのか。
自民党が掲げる「こども未来戦略方針」なるものがある。児童手当では所得制限の撤廃。ほかに高等教育の無償化や、出産費用一時金の42万円から50万円の引き上げ、子供の数に応じた住宅支援などをうたっているが、やはり中途半端だ。しかも、選挙を意識してか、「消費税を含めた新たな税負担は考えていません」との断りが載せられている。それが、かえって嘘くさい。
一方、出生率向上に成功したフランスで行われているのは、出産費用はすべて無料。2人以上とくに3人を超える子供世帯に、所得減税や年金10%の増額、家族補足手当と、傾斜配分した手厚い支援をしている。そして何と言っても出生の半分以上を占める「婚外子」についても助成の対象にしている。これは、結婚=出産という時代が崩れつつあるいま、「どういう子供でも国が支援しいくのだ」という国の覚悟、強い意志の表れだと思う。それに比べて日本(自民党)の政策は腰が入らず、なんと薄っぺらなことか。
国民にとって子供がいなくなってしまうことは、自分たちが高齢化し、助けてほしい時になっても、その助けがないということに等しい。年金制度を見ても、日本はもうそれに近い状況に突入している。国はそれを国民に納得してもらい、「子供を産み育てる財源」を負担させなければならない。だからむしろ増税が必要なのだ。確かに、その税が別な目的に使われてはならないが、しっかり目的に使われるなら、国民は喜んで負担するだろう。
もう一つ、選挙目当てとして気がかりなのは、旧統一教会への解散命令だ。文科省は13日に、東京地裁に旧統一協会に対する解散命令を請求したが、解散命令が本当に出るのかは分からない。確定までオウム真理教は7カ月、明覚寺は約3年かかった。「法令に違反し、著しく公共の福祉を害しているのか」「宗教団体の目的を著しく逸脱しているのか」との審査は結構、難航するだろう。高額な寄付を集めたことについて旧教団側は「あくまでも宗教活動」と争う構えで、何年もかかる可能性がある。
しかし私は、旧統一教会の解散よりも大きな問題は、政治が宗教団体と癒着し、集票や政策決定に利用してきたことだ。その説明責任と善後策の提示は十分とはいえない。なぜこうした癒着が起き、それがいつまでも放置されてきたのか。ジャニーズ問題じゃないが、しっかり膿をだすべき必要がある。解散命令の裏に隠れて責任回避している場合じゃないのだ。
「政党栄えて国滅ぶ」というわけにはいかない。甘言や目くらましにまどわされるような国民はもういない。最近のブログで何度も書いていることだが、政治は「結果を出さなければならない崖っぷち」を迎えているのだから。
(2023.10.20 風狂老人日記)