昨日のテレビや今朝の新聞に、参院選で議席を得た「NHKから国民を守る党」(N国党)に、失言などで維新を除名された丸山穂高議員が入党するニュースが報じられていた。N国党の立花孝志代表は、さまざまな問題で党を追い出され、無所属でいるほかの国会議員らに働きかけ、所属を5人以上に増やす方針だ。

 政党を満たす要件に「所属が5人以上」と「得票率2%以上」があり、N国党は98万票で得票率2%を超えたために、すでに政党条件を満たしている。立花代表は5人以上を確保することで、NHKの「日曜討論」などの番組に出演して、見たくない人は受信できないようにする「NHK放送のスクランブル化」を訴えるという。立花氏の目論見と、政党交付金などの恩恵を受けたい丸山議員の利害が一致したのだろう。

 私はN国党が目指す政治目的に対してとやかく言うつもりはない。ただし、その手段として,

もともと志の違う国会議員を寄せ集める「数合わせ」という手法に、やはり「政治の危機」を覚えるのである。

 1994年、政治改革の関連法として、「小選挙区」と「政党助成法」が制定された。小選挙区では、得票がトップの1人しか当選しない(次点以下、比例区との重複立候補で復活はある)から、戦いは激しくなる。そして勝つためには、政党から支援金(公認料)が受けられる「公認候補」が有利になる構図になった。一方、政党助成法では5人以上の政党に対し「政党交付金」を交付するようになり、候補と政党との(金の)結びつきはさらに強くなった。

 並行して生まれてきたのが、「新党結成」による、いわゆる「風の選挙」だ。目先を変え、有権者の関心を引いて投票に向かわせる。この25年間で、どれだけの新党が生まれ、消えていったか? 小沢一郎衆院議員を例にとれば、幹事長を務めた自民党から出た後は、10回も政党を換えている。小沢氏に限らず新党ができるたび、議員が離合集散して、政治理念もころころ変わってきた。そのことが政党不信、ひいては政治不信にまでつながっている。

 今の制度では、その離合集散まで止めることはできないだろう。すっかり「職業化」してしまった政治家も、生き残りをかけて選挙を戦っているともいえるからだ。しかし、選挙で声高に掲げていた公約を信用して投票した有権者の思いは、どこにいってしまうのだろう。投票した議員が任期中に、有権者が想像もしなかった別の政党に移籍するのは裏切り行為。有権者にとっては、何のために投票したのかわからない。まさに「無駄足」、「死に票」そのものだ。

 私が提案したいのは、任期中は少なくとも党を移籍することができず、離党した場合は無所属でしか活動できないような法律を作ることだ。それが有権者に対するせめてもの「義」といえるのではないか。                            (風狂老人日記 2019.7.30)