書き出し小説 51〜60日目
51日目
顔を上げると目が合う。右を見ても、左を見ても目が合う。いつも私を見ているこの目は、どうやら他の人には見えていないらしい。
52日目
たぶん、彼は終わらせたかったのだ。面倒なあらゆる事を。それが、新たな面倒の始まりになるとは知らずに。
53日目
今ではもう使われていない旧校舎側にある北門。その北門を出てすぐのところに設置された公衆電話。そこに自分が生まれた年号の十円玉を入れると、過去の自分に電話が繋がるらしい。
54日目
いつか役に立つから、と20年前に母からもらったレゴのパーツを未だに持っている。
55日目
最終電車で急停車に停電。こんな時にドラマが動き始めるのは、フィクションでもありがちなシチュエーションだ。事実は小説より奇なり、を僕が実感するきっかけにもなったのがこの事件だった。
56日目
二千年前にはできなかった選択を。今度は、きっとあなたに着いていく。
57日目
テレビドラマや映画に飽きたのなら、近くの図書館に行くと良い。本を読みに行くのではなく、そこにいる人を見に行くんだ。
58日目
こんな文庫本の1秒で通り過ぎちゃうようなところに紛れちゃうんだよ。私たちが一生懸命考えた言葉なんて。そう言うと彼女は次の本へ向かって行った。
59日目
いかに米を食べるか。日本の食文化はそのひと言に集約される。そう考えた僕は究極のふりかけを開発するための研究を始めた。
60日目
このお店のハンバーガーを綺麗に食べられるようになる。これが僕にとって大人になるということだった。
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