ロスアトムのリハチェフ総裁との会談の様子が伝えられており、当面、ザポリージャ原発の6基の低温停止状態は維持することでの合意が得られたことが述べられている。新たな状況としては、夏季に近づき、付近で山火事が発生していることが述べられている。

 

 

 

ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長はこの週、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)での原子力事故防止に向けたIAEA(国際原子力機関)の継続的な取り組みの一環として、ロシアの高官らと会談した。

 

5/28、カリーニングラードでロシア国営原子力企業ロスアトムのアレクセイ・リハチェフ総裁社長と会談した際、グロッシ事務局長は、IAEAが原子力安全にとって依然として真の課題であると考えている要因を改めて取り上げた。具体的には、ZNPPの外部電源系の脆弱性、原子炉の冷却やその他の重要な機能を確保するための信頼性の高い水供給源の必要性、人員配置や設備の保守に関する状況などである。

 

グロッシ事務局長が繰り返し強調しているように、IAEAは、特にZNPPで依然として不安定な原子力安全・核セキュリティに関する問題に関して、ウクライナとロシア連邦の両方と連携する必要がある。

 

「ザポリージャ原子力発電所は、引き続き深刻な原子力安全・核セキュリティのリスクに直面している。一瞬たりとも油断するわけにはいかない」とグロッシ事務局長はロシアの都市での会合後に語った。「欧州最大の原子力発電所が戦場にあるという、この困難で前例のない状況に鑑み、当面は6基の原子炉を低温停止状態にしておくべきだという合意がある」

 

「6基の原子炉すべてが低温停止状態にあるとしても、発電所の安全とセキュリティは依然として極めて脆弱だ。ZNPPの原子炉を将来的に再稼働させる決定は、安全が確保されたときに行う必要があるが、原子力安全・核セキュリティに関連するすべての運転上と規制上の観点を非常に注意深く詳細に検討し、発電所がこれ以上危険にさらされないようにする必要がある」と事務局長は述べた。

 

ZNPPサイトに駐在するIAEAの専門家らには、過去1週間、ほとんどの日、通常は発電所から離れた場所での爆発音が聞こえていた。しかし、5/19には、チームはサイト近くでの4回の爆発音で目を覚ました。ZNPP側からチームには、発電所に被害はないと知らせがあった。

 

またこの週、IAEAの専門家らは、原子力安全・核セキュリティ状況監視のための定期的なウォークダウンを実施し、1号炉の緊急炉心冷却設備(ECCS)や2号機の主変圧器など、安全系設備の一部で継続中の保守活動及び保守計画の状況を視察した。

 

IAEAチームはZNPPの保守作業場を実地検分し、すべての機器は稼働状態にあり、必要な保守作業を実行できるとの説明を受けた。

 

4号機の原子炉建屋と安全システム室を実地検分した際、IAEAの専門家らは蒸気発生器や主要な冷却ポンプなどの機器を観察した。チームは、一般的な維持管理状況は良好であったが、原子炉建屋の床には天井クレーンから出た油が少し付着していたこと、また安全システム室の一部の床にはホウ素の堆積物があったことを指摘した。これは、このような施設では珍しいことではない。ZNPP側からは、清掃と保守を通じてこれらに対処するとの確認があった。

 

IAEAチームはこの週にわたり、4号機と6号機の非常用ディーゼル発電機(EDG)の定期試験が順調に行われているのも視察した。

 

専門家らは5号機のタービン建屋の4階を実地検分し、主給水ポンプ、主蒸気弁(MSV)、主復水器など、さまざまな機器の状態を視察したが、またも、建屋の西側への立ち入りは拒否された。

 

IAEA専門家らは、サイト内の化学管理部門とも会合し、水処理に使用されている技術プロセスについて説明を受けたほか、必要な消耗品や化学試薬はすべてロシア連邦から供給されているとの説明を受けた。さらに、同部門にはロシアの原子力発電所(NPP)から来た人員を含め、十分な人員がいるとの説明があった。

 

ZNPPの熱機械品倉庫を実地検分した際、IAEAチームはディーゼル発電機のスペアパーツと電気機器を視察した。チームは、紛争前に西側供給業者から調達したものやロシア連邦の供給業者からのものなど、さまざまなメーカーのスペアパーツを視察した。ZNPP側からチームに、ロシアベースのスペアパーツと機器のデータベースへの移行を完了したとの通知があった。

 

IAEAの専門家らは、各原子炉建屋内にある仮設シェルターも視察した。これは、元々のシェルターが利用できないため、2022年にZNPP側が設置したものだ。チームには、これらの仮設シェルターに最大1000人がサイト内で避難できるとの説明があった。

 

夏が近づくにつれ、気温の上昇と気候の乾燥により、ZNPP周辺の地域で山火事が発生している。前週後半、IAEAの専門家らは、火災の煙を目にし、臭いも感じたが、ZNPP側によるとドニプロ川対岸での森林火災だと言う。5/28、IAEAチームは750kV屋外開閉所の南で山火事を確認したが、週の後半には鎮火したようで、電気系統への被害はなかった

 

ウクライナ国内の他の場所では、フメリニツキー、リウネ、南ウクライナの各原子力発電所とチョルノービリ・サイト駐在のIAEA専門家からは、過去1週間、数日にわたって空襲警報が鳴るなど、進行中の紛争の影響にもかかわらず、原子力安全・核セキュリティは維持されているとの報告があった。

 

過去1週間、リウネ原子力発電所の原子炉2基は、燃料取替と保全のための計画停止が予定より早く安全に完了し、無事に再稼働した。リウネ原子力発電所では現在、3基が定格全出力で運転されており、4基目の原子炉では燃料取替と保全のための計画停止の準備が進められている。一方、南ウクライナ原子力発電所の原子炉1基の計画保全活動は予定通りに継続している。

 

IAEAは、ウクライナの原子力安全・核セキュリティを維持するために必要性の高い機器と物資の供給を続けている。この週、IAEAはウクライナへの原子力安全・核セキュリティ機器の供給を2回手配し、武力紛争開始以来の物資提供は総計49回となった。 フメリニツキー、南ウクライナの原子力発電所、並びに医療、産業、その他の目的のための放射性物質の管理に携わるウクライナ国営企業USIEイゾトップは、物理的防護装置と空気モニタリングプローブシステムを受領した。この装置は、EUと英国からの特別拠出金を使用して調達された。

(写真: TASS/アレクセイ・コノバロフ)

関連報道:

https://www.dsnews.ua/world/magate-trebuet-ot-okkupantov-polnoy-holodnoy-ostanovki-zaporozhskoy-aes-30052024-502212

 

関連報道(ロシアメディア):

https://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/20951545

https://iz.ru/1704788/2024-05-30/grossi-ukazal-na-sokhraniaiushchiesia-riski-dlia-zaes