IAEA事務局長によるウクライナ原子力最新状況―Update 228

今週は、スプリンクラー・ポンドからの冷却水配管が損傷したことを想定した緊急時対応演習の話題がメインであり、IAEA専門家の所見は良好。サイトのウォークダウンで、ドローンを含め攻撃拠点として使用した形跡が見られなかったとのレポートは、ロシアメディアがこぞって報じている。

Update 228 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine | IAEA

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IAEA(国際原子力機関)ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、新たな専門家チームが、武力紛争中の原子力事故防止を支援するというIAEAの不可欠な使命の一環として、前線を越えて、5/16、ウクライナのザポリージャ原子力発電所（ZNPP）のサイトに到着したと述べた。

過去数週間にわたりZNPPで原子力安全・核セキュリティを監視してきた同僚と交代し、グロッシ事務局長が20か月以上前にウクライナ南部の同サイトに常駐体制を確立して以来、第19次のサイト駐在IAEA専門家チームとなる。

「IAEAは必要な限りザポリージャ原子力発電所に留まる。原子力発電所における原子力安全・核セキュリティの状況は依然として極めて不安定で困難な状況にある。サイト駐在の専門家のおかげで、我々は現地での進展状況について世界に発信することができる。我々は今後もこの大型原子力施設の安全を守るために全力を尽くしていく」とグロッシ事務局長は語った。

プラントが直面する潜在的な危険は常に存在しており、状況はいつでも急変する可能性がある。過去1週間にわたり、IAEA専門家らはZNPP周辺地域での軍事活動の兆候を聞き続けてきた。これには、サイトに近いところでの小火器の射撃だけでなく、少し離れた場所からの砲撃やロケット弾の発射音も含まれていた。前週後半、空襲警報によりZNPPの建屋外への移動が24時間制限されたが、この間、爆発音は聞こえなかった。

原子力発電所 (NPP) では、強力な緊急事態への備えと対応体制を整備することが極めて重要だ。5/15、IAEA専門家らはZNPPで、1号機原子炉とその安全系設備を冷却するための水を供給するスプリンクラー・ポンドの1つに接続された配管が損傷したという仮想的シナリオに基づいた緊急時対応演習を視察した。演習シナリオの下で、プラントのスタッフはスプリンクラー・ポンドに給水し、損傷した配管を修復すると同時に、安全系設備とディーゼル発電機が運転可能状態を維持していることを確認した。

IAEAチームの意見は、演習はよく体系化されており、スタッフの対応は効果的だったというものだった。

「すべての原子力施設にとって、効果的な緊急事態への備えと対応体制を整えることが不可欠だ。そのためには定期的な訓練や演習が必要だ。現在直面している並外れたリスクを考慮すると、ザポリージャ原子力発電所にとって、それらが特に重要であるのは明らかだ」とグロッシ事務局長は述べた。

IAEA専門家はまた、全6ユニットの中央制御室を含め、サイト内の定期的ウォークダウンを実施し、プラントの原子力安全・核セキュリティに不可欠な役割と責任を持つスタッフの活動を観察し続けている。しかし、専門家らは依然として中央制御室スタッフと話すことを許可されておらず、スタッフの経験や専門知識を十分に評価する能力を削がれている。

IAEAチームはこの週、2号機原子炉とその安全システム室も実地検分し、蒸気発生器や加圧器、そして使用済燃料プールポンプ運転機の計画切り替え作業の中でポンプが正常に起動する様子を観察した。チームは、ホウ素の漏洩を視認することはなく、クレーンからの油漏れを除き、エリアの全般状況は満足のいくものであったと指摘した。

さらに、IAEA専門家は、紛争中の発電所保護のための5つの具体的な原則の遵守状況を監視するために立ち入りが許可されているサイト外周壁やその他の建屋内へのウォークダウンを実施した。重火器やドローンがZNPPから発射された可能性を示す兆候は見られなかった。しかし、IAEA 専門家は依然として ZNPP のすべてのエリアへのアクセスは許可されていない。

フメリニツキー、リウネ、南ウクライナ原子力発電所とチョルノービリ・サイトに駐在するIAEA専門家からは、過去1週間に数日あった空襲警報など、進行中の紛争の影響にもかかわらず、原子力安全・核セキュリティは維持されているとの報告があった。

リウネ原子力発電所のIAEAチームから、前週、ウクライナの他の場所で電力インフラが攻撃され、発電所に接続されているバックアップ電力系統に不安定性を生じたとの報告があった。リウネ原子力発電所の4基の原子炉ユニットのうち2基と南ウクライナ原子力発電所の1基で、計画保守及び燃料交換作業(訳注：いわゆる定期検査)が予定通りに進んでいる。