IAEA事務局長によるウクライナ原子力最新状況―Update 221　～訓練センタードローン攻撃

露軍によるザポリージャ原発占拠は、訓練センターへの砲撃から始まったが、その訓練センターにドローン攻撃があった。連日のドローン攻撃で、原子力安全への懸念はますます深まっている。

ロシア側からの情報発信が非常に激しく、ウクライナ側はプロパガンダである旨を強調しており、ドローン攻撃事態を非難する声明を出していない。これが何を意味するのか・・・

Update 221 – IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine | IAEA

www.iaea.org

IAEA(国際原子力機関）ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、4/9、IAEAはウクライナのザポリージャ原子力発電所（ZNPP）に対する更なるドローン攻撃について報告を受け、サイトの原子力安全・核セキュリティの大幅な悪化を示す最新の兆候であると述べた。

発電所駐在のIAEA専門家チームは、4/7に複数の同様の攻撃の影響を検証したが、現地時間の4/9午前11時5分にライフル銃の発砲音とそれに続く大きな爆発音を聞いたとの報告があり、これは後にZNPP側が飛来したドローン１機が施設の訓練センターの屋上で爆発したと発表したのと同じ時刻だった。

このインシデントは、2022年2月に紛争が始まって以来数回砲撃を受け、8回も外部電源を完全に喪失した欧州最大の原子力発電所における、すでに非常に不安定な原子力安全・核セキュリティ状況に対する懸念をさらに深めた。

訓練センターはサイト外周壁のすぐ外側、1号原子炉から約500メートルに位置しており、このインシデントは過去20カ月にわたり6基の原子炉がすべて停止されているZNPPでは、原子力安全・核セキュリティに脅威をもたらすことはなかった。ただし、訓練センターには ZNPPスタッフが常駐している。IAEAチームは、影響の可能性を評価するために建屋への即時立ち入りを要求したが、軍事的な安全保障状況からそれは不可能であると説明を受けた。チームは4/7に要望し、実施したようなアクセスを引き続き求めていく。

「4/9に報告されたインシデントは、サイトの外周壁より外側ではあるが、我々が軍事的自制を繰り返し求めているにもかかわらず、これらの攻撃を継続する用意がなされていることが明らかであり、原子力安全・核セキュリティに重大な危険をもたらす不気味な展開である。背後にいるのが誰であったとしても、彼らは火遊びをしている。原子力発電所への攻撃は極めて無責任かつ危険であり、止めなければならない」とグロッシ事務局長は述べた。

4/7のドローン攻撃では、2022年11月以来、初めてZNPPが軍事行動の直接の標的となったもので、プラントの安全に対する新たな深刻な脅威を示した。これはまた、2023年5月に国連安全保障理事会でグロッシ事務局長が定めた、施設を保護するための具体的な5原則に対する初めての明確な違反でもあった。

IAEAチームの観察によって裏付けられた4/7と4/9のインシデントに加えて、IAEAの専門家は過去数日間に他の同様の事象についてもZNPP側から説明を受けた。ZNPPは4/5、サイト内の酸素・窒素生産施設付近でドローンによる攻撃があったと発表した。4/7、チームはすでに報告されていたものに加えて更なる爆発音を聞き、サイト外周壁の外、近くの港と訓練センターで他に2件のドローン攻撃の疑いがあると説明を受けた。4/8、ZNPP側は、6号機タービン建屋上空でドローンが、爆発を引き起こすことなく撃墜されたと発表した。いずれの場合も、IAEAチームはこれらの場所への実地検分を要請したが、安全上の理由からアクセスは拒否された。

グロッシ事務局長は、ここ数日の現場の深刻な悪化を反映し、次週、状況について国連安全保障理事会に説明を行う予定であると述べた。事務局長がウクライナ情勢についてこの15カ国からなる安保理で演説するのは、わずか2年強で7回目となる。

「私は、この悲惨な戦争中に大規模な原子力事故が起こるのを防ぐために全力を尽くす決意を持ち続けている。大きな危険に直面しているこの瞬間に、私は安全保障理事会への演説で状況の深刻さを強調する。ウクライナ内外の人々と環境に潜在的な影響を与える重大な原子力事故を防ぐためのIAEAの粘り強い努力に対する安保理の支持が最も重要だ。」と事務局長は語った。

IAEAの専門家らは、ここ数日間、プラント付近から爆発音や小火器の発砲、砲撃などの継続的な軍事活動の音を聞き続けている。

訓練センター(画像：タス通信動画のキャプチャ。画像中央当たりの傷がドローン攻撃の痕か？）

ウクライナ外務省プレス：

https://mfa.gov.ua/en/news/zayava-mzs-shchodo-chergovih-rosijskih-provokacij-na-zaes　

ロシア側が偽情報キャンペーンを強化しているとしており、ドローン攻撃には言及なし。

エネルゴアトム(ウクライナ国営原子力発電会社)プレス：

https://energoatom.com.ua/en/post/1693　ロシア側発表は自らの悪事を隠蔽するためのプロパガンダ

IAEA事務局長によるウクライナ原子力最新状況―Update 221 ～訓練センタードローン攻撃

IAEA事務局長によるウクライナ原子力最新状況―Update 221　～訓練センタードローン攻撃