過去のふり返り方を変えよう。昨年に学ぶなら、その先に未来は無いはず。 | "ナレッツェリア"

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ビジネスの智恵工房

新年を迎えるにあたり、昨年をふりかえることは重要だ。
しかし、昨年の延長線から新年を展望するのはいささか慎重にならざるを得ない。
昨年の成功は、今年の成功を裏付けないし、逆に昨年の失敗も。。すべてが糧になるわけではないでしょう。
「株」も「為替」も、ご自身のビジネスの行く末も、自分の体重の動きでさえも
昨年の延長線では考えないほうが良い。

しかし、まったく過去を参考にしない方がよいということを云いたいのではない。

スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式で行われた伝説のスピーチに【未来に先回りして点と点をつなげることはできない。君たちにできるのは過去を振り返ってつなげることだけなんだ。だから点と点がいつか何らかのかたちでつながると信じなければならない。】という下りがある。

そのスピーチでスティーブ・ジョブズは青春時代にリード大学に入学するも、6ヶ月で退学する。そこで、彼はフォントの作り方を学問として学んだが、その時にフォントは、人生の役立つという期待すらなかったと述べている。10年経って最初のマッキントッシュ・コンピュータを設計する時にその知識が役に立ち、マックの設計に組み込むことになったと触れている。

そんな彼の人生の中でも「iPod touch」の成功はその後のビジネスを変化させたのは周知の事実。彼の過去を振り返っても一直線に成功路線をたどったわけではない。
iPhoneは、いまやアップルの売上の過半を占める製品に成長したが、これとてiPod+iTunes戦略の成功後にApp Storeを立ち上げ、MAC_OSに逆展開する。
つまり、私が過去をふりかえって未来を展望する際に、注意したほうがよいと云いたいのは。。。
【過去に起きた事実の中にも未来を変化させる最近のグレーな動きがある。未来は神のみぞ知るとあきらめずに、未知の暗闇にひとすじの光を投げかける動きがある】ということを見ぬかなければならないということです。

実は、ベイズの理論を念頭においてここまで書いています。
$"ナレッツェリア"-自動車2

グラフは日本自動車工業会が公表している乗用車生産台数の統計です。
2011年3月の大震災で生産は大きく落ち込んでいます。その後の回復は一直線に行われたでしょうか?
夏場の電力不足に出足をくじかれ、その後に年末商戦にむけての大増産開始直後にタイの未曾有の洪水によって目論見は崩れ去ります。

つまり事前に起きた「大震災」によって対応を変えざるをえない現実に直面し、夏場の電力不足に遭遇して木・金休日など稼働日を変え、タイの大洪水によって年末までにサプライチェーンを復活させるという“事後的”な復活シナリオ成功の確率は水泡にきしたのです。

こうした現実の中では暫時修正的に戦略を転換するしか、個人も、企業も生き残れません。
つまり、過去の平均的な延長線上に未来を描くのではなく、明白になった過去から、全く先が見えない「暗黒の未来」にチョットした展望をひらくグレーな部分に着目することがポイントではないかということです。

これが従来の予測技術では過去のデータに適合度の高い予測モデルが最もよく未来を予測するというテーゼへの否定につながる。
単純に過去のトレンドの延長線上に未来を描けば図中に直線で示した「y = -137.84x + 6E+06」という回帰式になってしまう。

$"ナレッツェリア"-自動車1
だが、現実は前述したように電力不足やタイの洪水の影響をうけて、赤線で示したような動きになっている。これは、事前の想定していた統計確率モデルが、事後的に変化するということをイメージして描いています。

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単純に過去の自動車業界を前提に過去をふりかえって予測モデルを構築しても、その前提が崩れていくことが頻発している現在では、未来を展望できない。

昨年、もっとも変化の激しかったのは自動車業界だけではない。「株」の世界も異常に変化した年ではないでしょうか?
下のグラフは2011年12月の日経平均の動きを示している。
単回帰予測モデルで未来をなぞれば、来年は明るい株価を示しているように見えるでしょ。
しかし、本当にそうなのでしょうか?


$"ナレッツェリア"-かぶか
イオングループも中国シフト、都心部シフト、老齢者シフトを打ち出しているが。。もし日本の株価が中国の景気に左右されているのであれば、2012年は胡錦濤・温家宝が花道をかざる年でもある。

中国の景気は実力とは無関係に政策的に柳腰で成長を維持して行くでしょう。
NYダウに左右されているのであれば、年初は上昇するかもしれない。その先は欧州のリスクに依存するでしょう。
ここでは統計によって未来を展望してみる。

$"ナレッツェリア"-指数平滑

■指数平滑法という予測式を使うと、日経平均は8,700円から8,800円の間で上下しながら停滞する可能性を示している。
■ボックス・ジェンキンス法という予測式を使うともう少し説明力が上がっている。とりわけ、過去を平均的になぞっているのではなく最後の数日間のヒット率が高いのが特徴。
$"ナレッツェリア"-ARMA
こうしてみると、過去全体をなぞることが重要なのではなく、直近の数期間(数日間)を適合度高くなぞれる予測モデルがグレーゾーンに力を発揮することが直感的にわかりますね。

そこで私は、指数平滑法、ボックス・ジェンキンス法、グレー理論の3つの予測アルゴリズムを使い、直近の3期間の誤差率を計算し手、最も適合しているモデルを使って未来を予測するシステムを開発しています。

1. 指数平滑法:過去の最大値~最小値の間をジグザクに変化していくときに適合率が高い。
2. ボックス・ジェンキンス法:過去の最大値~最小値を超えてジグザクに変化しても、一定のトレンドをもっていれば趨勢をフォローする力が強い。
3. グレー理論:極短期予測に向いている。ちょっと過去の反応からすると過剰に反応しすぎるが変化が大きいときに向いている。


しかし、所詮はどんな予測モデルでも予測は外れる。現実を完璧に予測などできません。
そこで、予測が外れている内容を「周期性」のズレ、「趨勢・トレンド」のズレ、「レベル」のズレを三種類の要素にわけて因子を探る評価・分析ロジックをもあわせて開発しています。

つまり過去に学んでも予測が外れたときに、何故はずれたのかを原因がわかれば次のアクションに結びつくと思うからです。

ここ一ヶ月ほど、毎朝ジョギングをしているがiPhoneのアプリで自動的に走行距離も、走行速度も記録されています。週初めの曜日の速度や週末の曜日の速度がわかります。
週初めの平均速度は比較的速いのですが。。。
更に、当日の気温や天候との関係をも分析することができると自分の走力が容易に理解できて、近未来の自己ベストが予測できますね。

今後のスマートフォンの普及によっては、ダイエット記録やカロリー摂取記録、水泳やバイクの走行距離がルートとともに記録されていくと、さまざまな予測が劇的に進歩することだろう。
iPhoneアプリで予測技術をいかしたアプリも開発したいですね。

今年は、明白になった過去から見えない「暗黒の未来」を照らすグレーゾーンをITによって創造したいと思います。
皆さんの新年が明るい未来でありますように。