幸せな人を見ているといくつかの共通点があります。その中で特に目立つのが、素直かつ謙虚です。
 素直に謙虚という言葉を考えていたら、あるエピソードを思い出します。
 それは私が高校3年生だった頃のこと。勉強が極端に苦手だった私は、卒業が危ぶまれていました。無事卒業できたら、ビジネスの世界に飛び込むつもりでした。それこそ丁稚奉公として。
 勉強がでず両親には心配かけた分、ビジネスの世界で成功して、親孝行できたらといつも願っていました。ある時、私が尊敬していた国際経営コンサルタントから、将来国際的にビジネスを展開したいのなら、大学は行ったほうがいいと言われました。私は悩みました。高校卒業もおぼつかない自分が大学に行って何になるんだろうと。
 それで突拍子もないアイディアが浮かびました。それは大学に行かなかったのに、ビジネスで大成功した人に、私が大学に行くべきかどうか、アドバスしてもらうこと。
 調べた結果、松下幸之助という人は、大学どころか、小学校を中退したにもかかわらず、松下電器産業(現パナソニック)を創業し、事業を大成功させ、5000億円の資産を築き、1954年以降、長者番付で10回全国1位に、また40年間連続で全国100位に入るほど日本一億万長者になったのです。
 会社も住まいも大阪にあることを知った私は、アポなしで会いに行きました。毎日ストーカーっぽく追い回した結果、遂に1週間後にお会いでき、20分ほどお話させて頂きました。松下さんは次のようなことを言われました。
「これからは国際化、情報化社会になるんやから、商売やるにしても高等教育が必要になる。私は家庭が貧しかったから小学校中退して丁稚奉公したんや。行けるんやったら、大学行って勉強したほうがええ。それから覚えておきや。あんたが幸せに生きてられるのは、たくさん人のお陰やから、いつも感謝し素直に謙虚にやりなはれ」と。
 松下さんのアドバイスを受けて、私はなんとか大学にもぐりこんだのでした。彼から言われた「素直に謙虚に」は、その後、私の座右の銘になりました。