西武帝国崩壊=ハードだけで勝負する時代の終結


 西武帝国の崩壊が始まったとい言う人が出てきている。西武鉄道株事件で証券取引法違反(虚偽記載、インサイダー取引)の罪に問われた、西武グループの実質の帝王である前コクド会長、堤義明氏への求心力が著しく低下したからだ。これからは、集団合議制でグループ企業運営をしていくしか許されない状況だ。

 高度経済成長期やバブル経済期には、絶大なる政治力・経済力を持った、戦後最大級の帝国、西武グループの崩壊は、21世紀の「ベンチャーラッシュ時代」を象徴するかのようだ。

 つまり、西武グループのような昔ながらの鉄道、不動産、リゾート、流通関連事業を主体とした企業グループの拡大・成長が止まる一方、それに代わり、インターネットや情報通信関連事業を行う、ソフトバンク、楽天、USEN、イーアクセス、インデックス等の新興ITベンチャー企業の台頭が目立ってきた。


 丁度、米国でも同じようなことがあった。一昔前までには、石油や鉄鋼業が盛んで、それで起業した人々が財を成した。カーネギー、ロックフェラー等だ。

 私がかかわった米国フィラデルフィア郊外にある、WAWA社も、鉄鋼業で創業し、会社の基盤を作り、それが衰退してくると、乳業へと事業変換した。更に、最近は、コンビニエンス・ストアー事業へと進化させている。

 先日、先輩経営コンサルタントである現代人間科学研究所の飛岡健所長は、言われた。

「1900年にニューヨーク証券取引所で上場されていた企業で、現在も名実共に残っているのはゼネラル・エレクトリック(GE)一社だけなのです。100年という期間の中で、いかに事業を維持していくことが大変か、物語っていますね!」と。

 そのGEも事業をどんどん進化させてきている。業界で1番か2番になれない事業はど次々と売却していった。


 西武帝国が崩壊したのは、一見、堤氏のワンマン・放漫経営のように映る。しかし、私はそうは見ない。

 時代が変わったのだ。「ベンチャー戦国時代」へと。

 要するに、西武グループで代表される一昔前まで急拡大・急成長してきたハード(固定)思考の会社では、インターネットベンチャーのように今「超」急成長できている企業は脅威なのだ。また同じように成長できないことへのプレッシャーが物凄い。だから、誤魔化しや不正によって、見栄え・体裁を整えようとする。

 これから、西武帝国のように鉄道、不動産、流通などハードの資産で勝負する企業は、森ビル・グループが展開するようにどんどん新しいことに挑戦していかなければ、これから衰退していくだろう。現状維持ではダメなのだ。

 逆に、これは、「なぜインターネットベンチャーが急成長しているか」の説明にもなる。即ち、インターネットベンチャーは、ソフト(人材、知的所有権など)の資産で戦いを挑んできている。だから戦いにおいても変幻自在なのだ。

 21世紀の「ベンチャーラッシュ時代」に入った今、どの業種にあっても、少しでもソフトでの戦いに挑戦すべきだ。コア事業がハードであれば、組み合わせも考えるべきだろう。

 それが、実は生き残りをより確実なものにする。更に急成長のカギにもなるのだ。