「ソフトバンク的経営」は21世紀型「次世代経営」


 ソフトバンクの経営は、「新規事業開発経営」「投資先管理経営」「買収先経営」の3つに分けることができる。

ソフトバンクは元々ソフトウエアの流通業として、スタートした。

ところが、ソフトウエア流通市場はそれほど大きくなかったため、ベンチャーとして早くから、急成長したいがため、どんどん新規事業を開発して育てたり、国内外で次々とM&Aを繰り広げたりしていった。

そのため、ソフトバンク・グループの規模は、孫正義代表が狙った通り、急速に大きくなった。

そして、子会社や関連会社がどんどん上場して、巨額のキャピタルゲインを得るようになった。そんなことから、ソフトバンク・インベストメント(SBI)という投資会社をグループ会社のための戦略的な投資・育成をするために、分社化させたのだ。

 仕事柄、よく聞かれる。

「ソフトバンクは、事業会社ですか? それとも投資会社ですか?」と。

 それもそのはず、ソフトバンク・グループのほとんどが、投資やM&Aでグループ入りしたのだ。ソフトバンク本体で純粋にゼロから立ち上げた事業は少ない。

従って、ソフトバンクの主要な事業は、見方によっては、投資やM&Aと言ってもいいくらだ。ただ、明確なことは、ソフトバンク・グループの孫代表にとっては、事業形態や事業分野はどうでもいいことなのだろう。

それよりも、大事なことは、「その時々に一番成長する事業は何か」をいち早く見つけ、参入することだ。そして、次に、その急成長見込事業を自ら立ち上げ育てるのか、それとも、既存の企業をM&Aするのかがポイントとなる。

このようなソフトバンク・グループの一連の動き見ていると、ソフトバンクは、投資育成を事業とする事業会社とも言える。ただし、その事業範囲は、主にインターネット、ブロードバンド、携帯関連と絞り込んできた。なので、情報通信会社とも言える。


 さて、このような「ソフトバンク的経営」というものは、正しいのだろうか?

これもよく聞く質問だ。

 結論から言うと、ソフトバンクのような前例のない新しい事業形態をとっている会社こそが、21世紀向きベンチャー企業でないだろうか。

確かに、今までの企業形態論から判断すると、極めていい加減な会社と評価されてしまう。実際にソフトバンクの株主総会に行くと、株主からそのような厳しい指摘が飛び交う。

一つ言えることは、ソフトバンクは、事業に参入する際、会社の目線から見るのではなく、顧客や市場の観点から見て、徹底的に顧客の立場に立って言動しているようだ。


「ソフトバンク的経営」が、強みを発揮するためには、忘れてはならないことがあると、私は思っている。

それは、投資先やM&A先企業の顧客、社員、取引先、ソフトバンク・グループ以外の投資家、つまり「ストックホルダー」を長期的パートナーとして、大事にしていくことだ。

これは、実は大変難しい。なぜなら、新しくソフトバンク・グループに入ってきた投資先やM&A先企業の「ストックホルダー」は、よほどソフトバンク本体の経営陣が努力しない限り、よそ者的な扱いになるだろうし、また自らよそ者としての言動をせざるを得ないことになる。

 いずれにしても、「ソフトバンク的経営」は、これからメジャーになっていくだろうから、その手法をしっかり研究し、良いとこ取りするぐらいの気概が必要だ。

 そして、それだけではなく、ソフトバンク・グループに勝つためにも、あなた独自・独特のやり方も、少しずつ採用すべきだ。未完成でも導入して、やっていくうちに、完成されていくものだ。