将来直面する危機・問題を徹底的に予測する
ある大企業の新規事業に関するコンサルタントを3年間させて頂いた際のこと。この会社は日本企業としては稀なくらいグローバルに事業展開し、世界的にも著名なのだが、もし同社が新規事業開発において当時のままを繰り返し続けていったならば、山一證券や日本長期信用銀行のように会社そのものの存続が危ぶまれるだろうと、私は密かに案じていた。案の定、その会社は今大ピンチに陥っている。
なぜそんな大それたことが、凡人の私に予測できたのだろうか? 自問自答してみた。理由は簡単だった。
この企業は、私が知った時、既に重度の大企業病に犯されていた。その症状は、新しい事業を始めるにあたって、今の時代には通用しない過去の経験や知識を無理に集積させ、長期間かけて決めようとする。その期間は短くて3ヶ月、長いと1年もかけて意思決定をしていた。組織が大き過ぎて、決議をする前に必要な根回しと稟議書のやりとりで相当な時間・エネルギー・労力がかかる。
ところが、そうやって長期間かけて根回しや稟議をし、ようやく意思決定しても、いざ新規事業に取り掛かかる段階ではもう遅過ぎる。既に誰かが先にやり始めているか、もうチャンスはなくなっている。大概の場合、スピーディーかつフットワークのいいベンチャー企業に、既に先を超されている。
既に指摘したように、このような差し迫った経営環境の大変化から、今までのような過去の経験や知識に頼った意思決定はむしろリスクを高めてきている。
ではどうしたらこの危機を乗り切れるのだろうか? 米国の有能なトップマネジメントをこの5年間観察した結果、私は少なくとも次の点は経営者・管理者として常に心がけておくべきだと考えている。
それは、将来直面するであろう会社に対する危機・問題を、徹底的な情報収集をし、絶えず予測することだ。過去の経験や知識があてにならなくなった現代において、事前準備・予測能力が勝敗を決すると言っても過言ではないだろう。
米国で今伸びている大・中堅企業・ベンチャー企業の経営陣は、例外なくこの能力が備わっている。昔から、先見性は企業経営における重要な能力の一つと言われてきたが、今後その重要度は一層増していくだろう。