「雑用」こそ大切


 

「(その人にとっては)どうでもいいような細々とした用事」

 これは何のことかわかりますか? 

「雑用」の定義です。ここでポイントになるのは、実はカッコの中の「その人にとっては」です。会社や他人にとってではないのです。

 私は本当の「雑用」はないと思っています。会社や組織の仕事はすべて大事です。どんな単純な内容でもです。一つひとつの雑用をこなすから、仕事が完成するのです。

 例えば、顧客候補先企業に取引を始めてもらうため、提案書を出す場合、そのプレゼンに相手先企業からの参加者が5人とします。その提案書を作るのは、競合他社との競争により、極めて創造的であることから非常に大事な仕事と見られがちです。なぜなら、その提案内容によって仕事がとれるか否かが決まる可能性大だからです。

 一方、一度その提案書ができてしまえば、参加者5人に渡すためにするコピーは、どちらかというと普通「雑用」として捉えてしまいます。しかし、実際には、そのコピーの取り方や正確な部数を用意することは、会社や担当者の印象をよくする上で極めて大事です。コピーした人が間違えてしまえば、熾烈な顧客獲得競争から僅差で負けてしまうかも知れません。


 人間関係に長けた人は、このことをよく知っています。ですから、雑用だからといって気を抜きません。最終的に、その提案書が正しい内容・形・部数で、かつタイムリーに顧客の手に渡るまで全力を尽くします。正にすべてにおいて真剣勝負です。そんな状況下で、本当の意味での「雑用」など存在しません。すべてが、重要な作業なのです。

 この一般的に「雑用」とされることがきちっとできるか否かで、仕事においての勝負がつくことは意外に多いのです。特に年配の創業社長は、お金も教育も支援者等何もない中、一人で裸一貫から苦労して「雑用」とされることも含め、すべてをやり抜き、会社を育て上げたのです。その方々は、「『雑用』だから、一流大学出身の自分がやることではない」と相手が一瞬頭によぎっただけで、その貧しい心を見破ってしまいます。

創業社長さん達は、「雑用」を軽視する社員を評価しません。やはり何でも全力でやってくれる人を可愛がり、重職を任せたいはずです。