強いコミットメント=強い責任感=成果



 日産自動車のカルロス・ゴーン社長(当時)に聞きました。

「死にかかっていた日産自動車の組織をどうやって息を吹きかえらせたのですか?」

「社員一人ひとりに会社でやりたいこと、やるべきことを決めてもらい、それらに対して、ただの目標ではなく、コミットしてもらいました」


 私も同じような経験をしたことがあります。かなり前に大手日本企業の米国子会社F社の業績が急に悪くなりました。市場は成長し、競合他社の業績はいいのに、です。業績不振に対するF社社長の報告書はただの言い訳程度内容で、それを読んでも、今後どうしたら業績が良くなるのかを本社の経営陣はまったくわかりません。その上、F社社長は解決策がまだ見出せないのに、F社への大型追加投融資を本社に強く求めてきたのです。

 そこで、本社の社長は、F社社長を即刻解任し、ピンチヒッターとして本社の専務を現地に送り込みました。と同時に、私に業績不振の根本的理由と問題点の解明、更に業績を回復させるためにするべきことの提案を依頼してきました。

 最初の業績不振の根本的理由はすぐにわかりました。解任された社長に経営手腕がなかったのです。要するに、その彼に営業力と管理能力がなさ過ぎたのでした。

問題点としては、全社的に営業力がないことです。具体的には営業責任者が不在で、他の部署の人が兼任しており、強力な営業体制ができていないのです。ですので、現実的で明確な営業目標がありませんでした。従って私の業績回復のための提案の最優先項目は、有能な営業責任者を即刻雇うこと。そして、その営業責任者を中心に来年の営業目標を具体的な数値で出させ、実現できる営業体制をひくことです。

本社は、すぐにそれを実行するための応援を私に求めてきました。結局、有能な営業責任者を競合他社から引き抜きました。彼は、全営業メンバーにコミットできる営業の数値目標を具体的に出させ、それを達成させるため、ありとあらゆる手を打ちました。その結果、年間の営業目標をなんと九ヶ月で達成してしまいました。


営業責任者はあたりまえのことをしただけでした。そのあたりまえのこととは、出した営業目標を全員に完全にコミットさせ、徹底的に責任を持たせたのです。