命さえあれば何度でも



 多くの人は、ちょっと挑戦してダメだったら、自分に才能がないとか、能力がないとか、また運がないとかの理由付けしてしまって、それ以降挑戦し続けるのを諦めてしまいます。

もったいないことです。諦めて止めてしまえば、それまでの努力がすべて無駄になってしまいます。もうちょっと頑張れば、成果が出るかも知れなかったのです。

「成功の秘訣は、成功するまでやり続けること」

世界初のフランチャイズ・ビジネスとなった「ケンタッキー・フライド・チキン」(KFC)の創業者、カーネル・サンダース氏をよく知るアメリカ人の友人によると、この言葉はサンダース氏の口癖だったとのこと。

 よく成功者達は同じようなことを言います。当たり前と言えば当たり前かもしれません。いつ何で成功するかは誰にもわからないので、とにかく可能な限り、やり続けるしか成功への道はないのです。


 昔、弟分ともいえる後輩経営者が突然亡くなりました。28歳の若さで、です。

 彼は、とても性格が良く、問題が起こり周りの人が苦しんでいるのを見ると勇気の出るジョークを飛ばしていました。彼の場合、問題が起こっても、弱音は一切吐かず、解決できるまで、何度でも挑戦し続けていました。いつもニコニコし、人には絶対に動揺する姿を見せない、昔の武士のような清々しい青年社長でした。

 実は私は彼が社長をやっていた会社の会長を、彼が亡くなる直後まで引き受けていました。亡くなる1週間前に、彼とビジネス上での将来の夢を語り合ったのです。ですから、最初に心臓発作で一瞬でに亡くなったことを聞いた時、まったく信じられませんでした。

「あんなに元気だったのに……」と。


 でも、よくよく思い出してみれば、奇妙なことがあったのです。

彼は、亡くなる半年前から、それまで一度も私の前では口にしたことのないことを何度も何度も真剣に言っていたのです。まるで、その半年後に自身が死ぬことを知っていたかのように。

「浜口会長! 人間命さえあれば何度でも挑戦し、遂には成就できますよね! 僕もできれば今のビジネスを挑戦し続けたいなあ。たとえその前に死ぬことがあったとしても」

「何言ってるんだよ、死ぬまで、だなんて。まだ20代だろう。これからじゃないか。いっしょに頑張り抜こう!」

 彼と、そんな同じような会話を何度したことか。今となってみれば、彼がよく言っていた「命さえあれば何度でも挑戦できる」は、遺言となってしまいました。

 その言葉は今でも、私に物凄い勇気を与えてくれています。死んでしまった彼は、この世では、もう挑戦すらできないのです。

でも、私にはできます。何度でも。

 ですから、彼の分挑戦し続けるつもりです。二人の夢を実現させて、あの世にいる彼に報告します。

「ほら、君が夢見ていたことを、君のために命をかけて僕は実現させたよ。だから、もう何も思い残すことなく安らかに眠ってね」

 そうなのです。命さえあれば、夢は追い続けられるのです。可能性はあるのです。

 私は前々から不可能なことを可能にする挑戦を続けてきました。

たとえば、不器用で「超」頭が悪く、特に英語と国語が大の苦手だったにもかかわらず、米国の大学院修士・博士課程で学んだり、「国際経営コンサルタント」として様々な複雑な国際的難題の取り組みに挑戦したり、このように毎月1冊の本の執筆を続けたり。

私には能力的にできないと言われ続けてきたことを、諦めずに挑戦し続けてきました。そして、なんとか様々な夢を実現させました。これからもその挑戦は続けていきます。

命さえあれば何度でも挑戦できますから、できるまで挑戦し続ければいいのです。

エリートにはそんな愚直な戦いはできません。であれば、これからは、私のような単純バカにとっては大きなビジネス・チャンスになるのです。