バカだから有り難い



「キテレツ」(奇天烈)って聞いたことがありますよね! 普通「奇妙この上ないさま」を指します。ですから、一般的にはいい意味に解釈されていませんが、ビジネスでは、とても大事な考え方・心構えでもあり、戦術でもあるのです。

 正確には、このキテレツな発想がビジネスの世界では、成功のカギになります。逆に言うと、普通に考え、普通のことを普通にやったならば、たとえ最初成功できたとしても、すぐに競争に巻き込まれ、負けてしまいます。誰でもできる普通のことであればあるほど、資本力のある大手に参入され、真似され、規模のメリットで大敗することになります。

 従って、競合相手候補から見て、奇妙この上ないアイデアや方法でビジネスを始めると、相手が理解できないですから、すぐに参入して来ません。競合が参入する前に、どんどん進めて、ニッチである、まだ小さい市場を押さえてしまうのです。つまり、専攻逃げ切り型のビジネス戦法です。


「セブンーイレブン」でお馴染みのコンビニエンス・ストアー・チェーンを展開するセブン&アイ・ホールディングス(前イトーヨーカ堂グループ)代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)の鈴木敏文氏は、キテレツ的な発想をするリーダーです。

ご本人もまさかここまで出世するとは思っていなかったのではないでしょうか。元々中央大学商学部を出て、書籍卸業大手の東京出版販売(現トーハン)に入社。ここまでは一般的だったようです。普通のサラリーマンと違いだしたのは、労働組合のメンバーとして活動したり、調査研究に携わり、統計学や心理学も学んだりし始めた頃なのでしょう。

その後、当時のイトーヨーカ堂に再就職しました。そこから、創業者である伊藤雅俊氏と出会い、彼の快進撃が始まったのです。特に、周囲の人の反対を押し切り、業界の間で、日本では市場、つまり顧客ニーズがないため、どんなに頑張っても絶対に失敗すると言われていた「セブンーイレブン」の展開を、人生を賭けて挑戦しました。その結果は、ご存知の通り、日本最大級かつ高収益小売業態に育て上げたのです。

 その裏には、勿論伊藤氏の深い理解と絶大なる支援は欠かせませんでした。ただ、大商人である伊藤氏からそこまで信頼を勝ち得た鈴木氏の人間的魅力と捨て身の戦いは、並々ならぬものがあったと思います。

その真剣さがあったが故に、キテレツな発想が出てきたと思います。要するに、キテレツな発想は、真面目かつ実直にその道で生きているある種のバカ、正確に言えば、バカになって真剣にやろうとしないと出てこない発想なのです。


 私の元上司、ビル・ヒビットKPMG経営メンバーは。教えてくれました。

「一流の人物は真剣である。自らの信念の道を、一心不乱に突き進む気迫にみなぎっている。

いい加減な人間には、責任がない。

真剣な人間は、誠実である。

ふざけ半分の人生は、虚しい。

真剣な人生には、充実がある。

とくに、青年は真剣になった時に、光る。

……

『人生は真剣勝負だ。勝つか、負けるかの熾烈な戦いだ。』

……

甘えや気取りがあったら、絶対に勝てない。

勝つためには、命がけで戦うのだ」と。


 私は、徹底してバカになるということは、真剣に生きて生きていくことに繋がると思っています。実際に一流になった人は、皆最初はバカにされました。徹底してやり過ぎたため、気がおかしいと間違えられるのです。しかし、「気違い」とは、気が違うことであり、他の人とは、思いの強さが違っているのです。ですから、キテレツな発想ができるのです。