叱ってくれる人に感謝
「ネイト(私のニックネーム)、しつこいぞ! 既に忠告したじゃないか。何度電話したら気が済むんだ? 君が電話をかける度にクライアント(顧客)の担当者は仕事をストップしなければならないんだ! どれだけ迷惑になっているのかわからないのか!」
アメリカ人上司は私を大声で叱りつけました。普段はとても優しいはずの彼が、です。
夢だった世界最大級の国際会計・経営コンサルティング会社、KPMGニューヨーク本社に就職できた私は、監査部門の配属に。事件は私が監査調書を作り始めた際に起こりました。監査調書を作る作業に入る前に、上司のヒビット氏は私達新米に忠告してきました。
「初めてだからわからないだろうが、クライアントも忙しいんだ。疑問が出てくる度に細かい質問なんかするんじゃないぞ! 疑問はリストにしてクライアントの邪魔にならないよう、タイミングを考え順序立てて後でまとめて聞きなさい」と。
上司の言っていることは理解できました。しかし、実際に作業に入ってみると、本当に疑問だらけ。リストにまとめるだけの余裕はまったくありません。わからないことが多すぎて作業が進まないのです。結局上司に背いて、わからないことが出てくる度にクライアントに電話で聞く有様。迷惑したクライアントは、遂に直接上司にクレームを。
「おたくの新米スタッフが頻繁に電話してきて仕事になりません。なんとかして下さい!」
こんなクレームだったようです。私は落ち込みました。一つ一つクライアントに聞かないと作業が進まないのです。問題は私の段取りの悪さや忍耐力のなさにあることが後になってわかりました。上司は、私の短所を直そうと。クビにすることもできたはずでしたが、あえて叱ってくれたのです。私は猛反省しました。
「私は自分を叱ってくれる人に感謝するようになってから、人間的にも成長し事業の上でも更に成果を出せるようになったんだ」
かつて、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が語ってくれた言葉です。松下幸之助氏もそうでしたが、成功者は皆、叱ってくれる人への感謝の念を忘れないようです。