まず先人から学ぶ



「君達,もったいないじゃないか。なんで先輩達の失敗をしっかり調べ学ばないの? 既に彼らが示してくれているんだから、同じ失敗をする必要はないだろう!」

 業績不振だった大手半導体製造メーカー、テキサスインスツルメンツ(TI)社を最高経営責任者(CEO)就任から一年で一気に蘇らせたジェリー・ジャンキンズ会長は、研究開発部門の社員達を前に厳しく言い放ちました。

 TI社は昔既に同じような研究で失敗をしていたのでした。しかし、それはかなり前のこと。当時のことを知っている社員は、もう誰もTI社にはいません。

TI社の顧問をしていた私は不思議に思いました。

(どうしてそんな昔のことをジャンキンズ会長は知っているのだろう? 彼もその頃はTI社にいなかったはず……)

 ず~とその疑問を持ち続けていた私は、彼との会食で何気なく聞いてみたのでした。

「なんだネイト(私のニックネーム)、そんなこと疑問に思っていたんだ」

「私だけじゃないですよ。たぶん社内に誰もその疑問に答えられる人はいないでしょう」

 するとジャンキンズ会長がニヤニヤしながら一言。

「その疑問に答えられる人がたった一人いるよ」

「誰ですか? 何で?」

「私の長年の秘書だよ。彼女は、私がCEOに就任した直後から、私が何をやってきたか、よく知っているからね!」

「何をやったんですか?」

「TI社創業以来の技術上、経営上の失敗を洗いざらい徹底的に調べさせたんだよ。調査にかなりの時間と労力を要したけど、お蔭で私は同じ過ちをしないで済んでいるんだよ。おそらく、それで再度の失敗による何十億ドル(何百億円)の損失は防げていると思うよ。とにかく成功したけりゃ、『先人から学べ!』だよ。歴史は繰り返すからね!」