「やるべきことリスト」とは


 日常の仕事において、多くの人が「優先すべきことリスト」や「やるべきことリスト」を誰に言われることなく、自然に作っています。

 なぜでしょう?

 便利だからです。殺人的なスケジュールをこなしている人にとっては、それはまさに必須です。

 これらリストは、あくまでも仕事をスムーズに行うためのものです。

 これから説明する「やるべきことリスト」とは、キャリア・プランにおいて大切なツールです。


 会社を辞める決断をする前に、「やったことリスト」を作ることをお勧めしました。「自分棚卸」、つまり自分という人間を正確に知るためです。

 それによって、自分がどの分野が好きで向いているのか、また各分野において自分がどれだけ進歩してきたかがわかるわけですが、辞める決断をする上で実はそれだけではまだ不十分なのです。

 なぜか? 過去やってきたことの把握と分析はできたとしても、本来やるべきことでまだしていないこと、つまりこれからやるべきことの把握と分析ができていないからです。

 それを助けるのが、「やるべきことリスト」なのです。

 辞めるかどうか決めるのに、この「やるべきことリスト」は強力な助っ人ツールになります。

「やるべきことリスト」を作れば、本来あなたがやっておくべきことだったのに、やれていないことが明確になります。要するに仕事の上でのやり残しがはっきりするのです。

 たとえば、私の場合、「会社を辞めるまでに営業でトップをとる!」「上司の評価で100点満点中90点以上とる!」「部長として部署のスタッフを50人以上にする」という目標を掲げました。これらを達成させることは、部署全体の業績アップに直接つながるのです。

 もし、私がこれら目標を達成しないで辞めたとします。私が去った後、部署はガタガタになるでしょう。そうなれば必ず言われます。

「浜口は、個人的には頑張っていたかも知れないけど、結局部署のことを考えない自己中心的な個人プレーヤーだったよな。だから、無責任にもさっさと辞めたんだ。部署をこんなにめちゃくちゃにして……本当にどうしてくれるんだ!」と。

 私が辞めた後、再就職をすることになって、再就職先の人事部長さんが、私の古巣である会社に私の照会をしたどうでしょう。

「彼は自分勝手な我侭な人でした」なんて言われてもしょうがありません。

 辞める前に残った人に迷惑がかからないようにするために、「やるべきことリスト」を作り、それを基にどんどんやるべきことを行うべきでしょう。


 先日、弊社でも社員が突然辞めてしまいました。それも入ってまだ3ヶ月も経っていなかったのに、です。

辞める前は、他の社員から「よく働く」「気が利く」「優しい」「仕事が丁寧」等々絶賛されていました。

 ところが、突然の辞めたことで、皆にしわ寄せがきたのです。人によっては、以前から忙しかったのですが、更に辞めた人の仕事がドカーンとのしかかり、しばらく残業しなくてはならなくなりました。

 分担できる仕事であればまだましです。本人だけでやってきて、引継ぎもしなかった仕事の場合、まったくお手上げです。

 こんなことがあったので、ある男性社員が言いました。

「辞める前までは『天使』のように見えた彼女だけど、辞めた後はまさに『悪魔』がいたとしか思えない」と。

 言い過ぎだとは思いましたが、残った社員の気持ちはよくわかります。

 もし、彼女が辞める前に「やるべきリスト」を作って、やるべきことをきちっとやっておけば、彼女の評価も変わったことでしょう。

 第一、「やるべきリスト」を作っていたら、彼女はまずあまりの責任の重さに、そう簡単に辞めなかったと思います。


「やるべきことリスト」を作ったところ、会社で頑張らなければならないことがたくさんあることが明確になり、それらを一つひとつやっていったら、1年以上費やしてしまった人がいます。それで気がついたら課長に昇進となって、結局、その後5年経った今でも、会社で頑張っています。

 その彼が私に言うのです。

「辞めるべきかどうかを迷っていたあのとき、『やるべきことリスト』を作るよう浜口先生が教えてくれたお陰で、無責任者としてのレッテルを貼られないで済みました」と。