転職で成功した人


 友人や知人で、転職で成功した人を見ていると、共通点があることに気付きました。

 それは、一つひとつの単発的なチャンスで進路を左右されていなことです。

 具体的に言います。できる人ほど直接会社か、又は間接的にヘッドハンターを通じてお呼びがかかります。が、どんなにいい条件でも、どんなに栄誉のある仕事でも、自分の仕事や人生のゴールから逆算したとき、意味がなければ転職しないのです。

いい条件で栄誉ある仕事なので、大抵の人は喜んで飛びつきます。

しかし、転職で成功する人というのは、確固たる人生の指針を持ち、それに沿って進路を決めていきますので、生き方にぶれがないのです。


 手前味噌で恐縮ですが、私も独立する前に一度転職を経験しました。それが、信じられないくらい上手くいったのです。人生設計から見ても、また条件においても、です。

 なぜあそこまで上手くいったのか? ずーと考えていました。それで気がついたのです。

 やはり、キャリアにおける最終ゴールから逆算した上で、その転職がぴったり合っていたのです。

元々独立するまで転職せずに勤め上げる気でいました。ですからヘッドハンターを通じて転職にお誘いがきたときと、すぐにお断りしました。

本来ならそれでその転職の話は終るところですが、相手方企業のトップまで私を獲得するために説得に乗り出したのです。それも誠実に。

実は私が業界に入ってからずっと目標としていたプロフェッショナルが彼だったのです。ですから余計彼のその誠実な行動には心が揺れました。

遂に勤めていた上司に相談したところ、私が近い将来独立する意志があるのを知っていたため、独立するためにはいい経験だということで転職に賛成・応援してくれたのです。

確かにその転職は独立する準備の観点から見たら絶好のチャンスでした。

しかし、それは勤めていた会社を裏切ることにもなりかねない転職です。競合他社に移るため、私が担当していた顧客まで転職先に持っていってしまうことになるのです。

でも、上司は私に言いました。

「確かに、うちの会社として君に今辞められることは困る。大きなマイナスになるだろう。しかし、君には『国際経営コンサルタント』として独立する夢があるはずだ。だったら、自分の夢を追求したらいいじゃないか。こんないいチャンスはうちに残っていても、なかなかないからね。私は個人として全面的に応援するから」

 それでも躊躇している私を見て彼は言いました。

「ダメだったら、またうちに戻ってくればいいじゃない。私も会社も君をいつでも受け入れるから」

 この言葉は今でも忘れられません。この言葉があったからこそ、私は転職を決意したのです。

 お陰様で、転職後独立するまで、私は新しい会社で思い存分仕事をやり切ることができ、実績として大きな成果を残せました。それで、独立もスムーズにできたのです。


 結婚と同じで、転職は条件や報酬額など短期的な視点からではなく、将来を見据えた上で、最終ゴールにより近づくものでなければ、失敗する確率は高くなります。

 ですから転職する前によくよく考えてみて下さい。その転職がキャリアゴールに近づくものなかかどうかを。

 また、もっと大事な視点があります。それは、単なるキャリア・アップだけでなく、プロフェッショナルとして、また社会人として、周りから理解・評価される転職になるかどうかをしっかり確認することです。

 でなければ、一番大切な信用を落とします。信用を落とすと、長期的には大きなダメージとなります。ビジネスの世界では、信用第一ですから。