仕事中毒は悪い?
私が米国で勤めていた大手国際会計・経営コンサルティング会社、KPMGでの直属の上司、ビル・ヒビットさんがまさに「仕事中毒」でした。それも半端でなく、凄い「仕事中毒」でした。
「仕事中毒」って、他のことをおろそかにして仕事ばかりするという悪いイメージがつきまとっています。しかし、上司のヒビットさんの「仕事中毒」は、とてもすばらしいものでした。今でも彼ほど仕事をする人を知りません。
特に凄かったのは、中身であり生産性です。比較しにくいのですが、本当にできる日本人ビジネスパーソンよりも2倍は働いていたと思います。そして、仕事に必要な勉強も怠りません。
ヒビットさんは、米国では三流行と見られているケンタッキー大学で会計学を専攻し、私同様、運よくKPMGのニューヨーク本社に採用になりました。
同期入社組が、ハーバード、スタンフォード、エール、MIT(マサチューセッツ工科大学)など超一流大学出身者が多かったこともあり、入社するなり物凄い努力をしたそうです。それで、どんどん成果を出して頭角を現し、スピード出世していきました。
出世だけではありません。夜間の経営大学院(ビジネス・スクール)に通いながら公認会計士(CPA)の資格を取りました。その後、更に法律大学院(ロー・スクール)にも行き、法学博士と弁護士資格の両方を同時に、KPMGで働きながら取ってしまったのです。
それは、会社でのハードワーカーとしての伝説になりました。なぜなら、KPMGニューヨーク本社の仕事は、寝る時間も確保するのが困難なぐらい殺人的に忙しいのです。
そんな苦労をしたヒビットさんは、私が彼の部下となった後、夜テキサス大学のビジネス・スクールに行くことを大いに喜び、励ましてくれました。そして、博士課程を終えるまで、全面的に応援してくれたのです。
彼のお陰で、授業にもほとんど休んだり、遅れることなく参加できました。有難いことに、私が勉強で頑張っているということで、特別手当まで出すよう会社とかけ合ってくれ、実際に当時私の立場からすると、とんでもない金額の特別賞与を頂きました。
彼は、確かに誰が見ても「仕事中毒」ではありましたが、二人のお嬢さんがいる家庭、趣味のゴルフ、多くの部下の面倒、更に教養と専門能力を高めるための勉強等々、すべてやりきっていたのです。
他の上司と比較して特に優れていたところは、とてつもない集中力、仕事のスピードと正確さ、職場での部下や秘書への思いやりでした。ヒビットさんという人間を最初に知って、そのすさまじいハードワーク、すばらしい人間性、そしてとてつもなく大きな人間的器に本当に驚きました。
「人間って、こんなに、休みなくバリバリスピーディーに仕事がやれ、その上気配りができるんだ!」
渡米する前、アメリカ人は個人主義で働かないと聞いていたので、その私の直属の上司がまったく逆で、彼がアメリカ人としては例外なのか、聞いていたことが間違えていたのか、どちらか正しいアメリカ人像なのか戸惑いました。
結論からすると、アメリカ人でも、トップクラスや出世頭の人々はとんでもなくよく働くということです。よく働く日本人以上にです。