就職の意義

ある時、フリーターさんから質問されました。

「就職って何ですか?」って。

 聞くと、その人は、高校を中退してから、ずっとフリーターをしてきて、一度も就職したことがないそうです。

でも、ちょっと待って下さい! 就職の定義は、「新しく職を得ること」です。ですから、フリーターも、働いている時は、れっきとした「就職していた人」なのです。

ちなみに、フリーターとは、和製洋語で、フリーとアルバイター(アルバイトをする人)の混交。意味は、「自分の好きなときに好きな仕事だけをするという形のアルバイター」です。

 好きなときに、好きなことだけかも知れませんが、でも雇用主から正式に許可を得てお金を貰って仕事をしているのです。私に言わせると、それは正真正銘「就職」なのです。

 つまり、広義の意味の「就職」とは、「新しく一定の仕事をする」ことです。それが、例え、短期であろうと、いつまで続くかわからなくてもです。超短期のアルバイト、例えばチラシ配りから始まって、引越しの手伝い等、要するにどんな仕事でもです。

 フリーターだろうと、大企業の正社員であろうと、働いているという点では同じです。ですから、働いていれば就職したことになり、働いていなければ就職していないのです。


「就職」とは、職に就くことなのです。

「就職」で大事なことは、その職、つまり仕事をすることで、お金がもらえるわけですから、その仕事をすることにおいて、プロ意識をもつことです。仕事をすることで、たとえ一円でもお金を頂く場合、その仕事を実行するにおいてプロなのです。

 と言うことで、私にとって「就職」とは、その仕事において、プロになるということです。プロとは、プロフェッショナルの意味で、お金を貰って仕事をする人です。正社員だろうとアルバイトだろうと関係ありません。お客様の観点からはどうでもいいことだからです。 

顧客は、何かの理由で自分ではできないため、お金を出して、仕事を代わりにしてもらう、もしくは手伝ってもらうのです。その支払いが顧客から直接あるか、会社を通してあるのかの違いこそはありますが。

 お金を貰う仕事を始めた瞬間、あなたはもう就職しています。でもその仕事が続けられるかどうかは、あなたの働きぶりや成果によります。どんな仕事もです。働きぶりや成果が、お金を出す人達の期待を下回れば、費用対効果のルールから、あなたは、その仕事から辞めさせられるでしょう。

 アルバイトだろうと、短期の仕事だろうと、「働く」、即ち「就職する」ということは厳しいことなのです。だから、人間的に成長するのです。自己管理をして頑張らなければならないからです。

どんなに好きな仕事でも、いつも楽しいことばかりではありません。厭な上司、不合理なことを要求する顧客、我儘な同僚、言うことをきかない後輩を相手に働かなければなりません。いつも楽しく自分の好きなことだけしていたら、飽きてしまいます。

人間は、楽しいこと、面白いこと、大変なこと、辛いこと、厭なこと、頭にくること、頑張らなければならないことなど、瞬間瞬間違うからこそメリハリができて、本当の楽しさが味わえるのです。

ですから、「就職」とは、楽しいこと、辛いこと、我慢すること、厭なこと、人間的に成長することなのです。一言でいうと、人間が人間らしく生きるために必要なことなのです。


精神的にも体力的にも頭脳面でも、最高潮である時、即ち10代後半から50歳位まで、独立も含めて就職することは、人間本来のやりがいや生きがいを与えてくれます。「生きててよかった!」となるわけです。

なぜだかわかりますか? 

就職するということは、好むと好まざるとにかかわらず、他人とかかわることでもあるからです。人間が一番美しく輝く時は、他人とのかかわりの中で、自分らしさを出しながら、少しでも他人や社会に役立っていると実感できる時なのです。