プライドを捨て便利屋になろう



「プライドを捨て便利屋になれる人ほど怖い者ない。体を張って命懸けでやるから、結果も必ずついてくる」



世の中には、頭がいい人がいっぱいいます。またそれに伴ってプライドの高い人も多いようです。

 特に、海外の一流大学、大学院、経営大学院(ビジネス・スクール)、法科大学院(ロー・スクール)を卒業して、社会で活躍している方々にプライドの高い人が多いのには驚かされます。


 確かに、難関を突破して合格し、大変な勉強量と難しい試験や論文をこなしてきたのですから、誇れるものはあると思います。

 しかし、それは、頑張ったこと、またその分野の知識が一定以上であることの証明のようなものであって、ビジネスや社会で成功できる保証はまったくありません。

 却って、そのことで、プライドが高くなって、謙虚さを失い、要領よく振舞うことを覚えたりします。仕事はできても、周りの人から人間的には好かれないでしょう。


 縁あって、私は米国のビジネス・スクールの修士・博士課程で学びました。その間、昼間は、大手国際会計・経営コンサルティング会社にコンサルタントとして働きながら、夜は、ビジネス・スクールの院生に教える一方、授業を受ける機会も得ました。

 その時の集大成として、『MBAでは学べない勝つ経営の本質』(日経BP企画)という本を2002年に出しました。

その中で言いたかったのは、MBAは管理者やビジネス・リーダーになるための資格でもなければ、必要なものでもないこと。また、あくまでも、ビジネス全般の知識を得、ビジネスで使うコミュニケーション力を高める訓練を受ける場であることを主張しました。


 ビジネスにおける成功のカギは、ビジネス・スクールに行って、経営管理修士号(MBA)を取得することでも、ビジネススキルを高めることでもありません。

 人間性を磨くことなのです。

逆に人間性を大切にし、磨こうとしない人にとっては、MBAや他の資格は、「猫に小判」です。場合によっては、専門バカになってしまいます。


 私は、テキサス大学ビジネス・スクールのMBAコースで、7年間、ビジネス関連科目全般(簿記論、財務管理論、管理会計学、財務会計学、税務論、原価計算論、マーケティング、組織論、経営戦略論、マーケティング論、国際経営論等)を教えたことがあります。

それに基づいたことで、先日、面白い調査結果を得ました。

 

同ビジネス・スクール卒業生で、一流のビジネス・リーダーになった人達は、どちらかというと、成績が良かったわけではなく、中ぐらいのレベルでした。積極的に、クラスをまとめ、皆とコミュニケーションをとることに努力していた人々なのです。

 つまり、エリートタイプではなく、プライドを捨て、ありのままの自分で体当たりしてくる人間性溢れる人達だったのです。そんな人達は、クラスでも皆から不思議と慕われ人望がありました。

 彼らに共通していたことは、皆ある種の「便利屋」のように、クラスのメンバーのために尽くしていました。ですから、皆に当てにされ感謝されるのです。


たとえば、国際経営のコースで、グループ別にプレゼンをする場合でも、早めに教室に来て、画用紙やマジックペン、またパソコン用プロジェクターを準備するのです。そして、授業が終るなり、真っ先にチョークで文字だらけになった黒板を消してくれるのです。

講師だった私は、お陰で授業が始まる前や終った後は、ほとんど何にもしなくて済みました。とても楽でした。


私は、四半世紀近く日米アジアでビジネスをやってきて思います。

人間的に優れている人ほど、便利屋のようにプライドを捨てて何でもやるのです。とても腰が低いのです。

また、プライドを捨てて便利屋になれる人は、とても強い人です。目標達成のためには、何でもやろうとする気概があるからです。

正に、捨て身で頑張り抜ける人なのです。そんな人は頼りがいがあるので、皆に当てにされるのです。