「自分のことを『ダメだ』と思っていない人ほどダメな人はいない」



 やっていることがダメなのに、自分が本当にダメだと思っている人は意外に少ないようです。

「まだ、なんとかなるだろう」

「彼の方がまだひどいや」

「自分もまだ捨てたものじゃないや」

 こんな感じで、まだまだ平気だと思っていませんか?


 私も米国で就職した際、本当にギリギリに追い詰められるまで、心配はするものの、ノンビリやっていました。

 そのうち段々険悪な雰囲気になっていって職場にいられなくなったのです。

それもそのはずです。仕事に必要な専門知識や英語力がなかったからです。

 遂には、上司から解雇の可能性まで通知される有様。まさに崖っぷちに追い込まれた状況となりました。

 それからです。「僕はこの会社ではもうダメかも知れない」と、危機感を持ち始めたのは。

 昔から自分のことをダメ人間とはなんとなく思っていました。が、本当にどうしようもなく「ダメだ」と感じたのは、その時が初めてかもしれません。

 それで、そのダメな状況から脱却するために、それこそ必死に考え働きました。

 異国の地で解雇されれば、それこそホームレス&ジョブレスになってしまいます。そんなことが頭を過ぎると、段々恐怖感も出てきたのでした。


 クビを切られないために、ありとあらゆる努力と工夫を始めました。

 たとえば、働く時間を増やし、効率を上げるため、始業時間より1時間以上前に出社して、仕事の準備を始めした。そして、TO DO LIST(やるべきことのリスト)を出勤直後に作り、退社するまでにその日にやるべきことをすべて終らせるようにしました。また、残業手当も要求せずに、毎日深夜まで働きました。

「これぞ火事場のバカ力」です。

 見違えるようにハードワーカーになった私を見て、さすがに上司も悩み始めたようです。

「頑張っているから辞めさせるのも可愛そうかなあ……」という具合に。

 それからというもの、毎日毎日すべてにおいて一生懸命やりました。皆が嫌がるコピー取り、電話番、お茶だし、掃除、郵便配り。雑用という雑用は何でも積極的にやるようにしました。

 その直向な姿勢を、段々上司を含め周りの人々は、私のことを見直し始めたのでした。

 結局、クビを切られずに、私の方から退職するまでの8年間、ずっと雇い続けてくれました。昇格というご褒美までつけて。


 考えてみれば、私は、自分を本当に「ダメだ」と感じた時点で、ダメ脱却の一歩を歩き始めていたのです。それまで、悩み葛藤はするものの、ダメ脱却のための行動を起こすほど深刻ではなかったのです。

 ですから、ダメ脱却のために人間は大いに悩むべきだと思います。とことん悩まなければ、真剣に向上しようとしないし、人間的成長もありません。

「大人は皆悩んで大きくなった!」

 この昔よく聞いたキャッチコピーです。

ダメ人間だからの辛さや悩みを持ったとき、いつもこの言葉が出てくるのです。

あなたも悩み抜いて人間的に成長しませんか!