勉強しないと損をする


 私は頭の悪い子供でしたから、勉強しても理解できない上、最低覚えないと前に進めないことも覚えられず、いつも途中で投げ出していました。

 でも嫌々ながらやっていました。嫌々ながらですから、全然身につかず、ただただ時間ばかり浪費しているのでした。

 お陰でどんどん勉強嫌いになり、大人になったら将来勉強しないですむ仕事につくと決めていました。

 勉強しないと決めたら、学校の成績で断然ペケに。

 それを知った母は、あるとき私に言いました。


「直太、お前は頭が悪いから、いい成績がとれないのはいいんだよ。でも、勉強して悪い成績をとるのと、勉強しないで悪い成績をとるのはまったく違うんだよ。お母さんは、勉強して悪い成績をとるのは、いいと思ってるよ。いい成績をとるのが、勉強する目的ではないからね」

 私が母に聞きました。

「お母さん、じゃあ、勉強する目的って何?」

 母はその質問が来ることを待ってましたと言わんばかりにニコニコしながら一言。

「人間として立派になるためだよ。バカでは世のため人のためになることができないからね」

 それまで、勉強は成績のためにやるものだと思ってきた私にとって、その言葉は天からの救いでした。嬉しくなった私は、母に聞き返しました。

「じゃあ、一生懸命勉強して、クラスで最低点をとっても、いいということなの?」

 母は自信満々に言いました。

「そうだよ、一生懸命勉強することが一番大事なんだよ。成績なんて、二の次。一生懸命勉強し続けていたら、時間はかかるかも知れないけれども、成績なんてそのうち良くなるから、成績の心配なんてしなくていいから、直太なりに頑張りなさい。成績が悪かったって、悲観することはまったくないからね! とにかく、勉強することを通して、人間を磨きなさい。そうしないと、大人になったときに、生きていく上で大損することだけは、覚えておきなさい」


 それから、私は自分なりのマイペースで一生懸命勉強を始めました。人間としての訓練と思って。残念ながら、成績はあまりよくなりませんでしたが、超我儘だった性格が、少しずつよくなっていくのを感じました。