相手の都合を考えて話す


 人は話たくなったら、自分のことしか考えなくなる傾向性があります。話したいときというのは、ある種の興奮状態にありますから、人間らしいとは言えます。

 しかし、相手からするとたまったものではありません。相手の都合も考えず、言いたいことを一方的に話されたら、もう二度と話したくなくなるでしょう。

 携帯電話の普及に伴い、そんな自分勝手な若者が増えているようです。本人達は、「話したいときに話すのに何が悪い?」と思っていますから、厄介です。


酷い場合、いきなり電話してきて、言いたいことを一気に伝え、突然電話を切るということもあります。

 現に私はそれを何回か経験したことがあります。

職業柄、仕事の悩みでよく話したいとの連絡を受けます。

 極端なケースは、「今聞いてもらえなければ、自殺するかも知れません」なんて脅迫にめいた電話があったりもします。

 私はそんな対応に結構慣れていますので、すぐに言い返します。

「それじゃあ、まず私の『仕事と人生を熱くする、いい話』という本を読んで下さい。そこに答えが書いてありますから。それを読んで納得できなければ、もう一度電話を下さい。その際にしっかり相談に乗りますので。でも、じっくり相談に乗るためには、あらかじめ時間を空けておかなければならないため、事前に時間帯を調整し合いましょう!」

 そこまで言うと、相手も白けてきて、「今すぐじっくり話を聞いてほしい!」なんてこと言わなくなります。


 どんなに立派そうな人でも、また地位や肩書きのある人でも、相手の都合も考えずに一方的に話す人は、品格のない人です。要するに人格者ではあり得ません。

 人格者の要件は、いつも相手の身になって言動できることです。そこには、地位や立場など一切関係ないのです。裸の人間対人間のやりとりです。

 相手の都合を考えて話をすることは、相手がどんな人であれ、自分と違った人生を歩んできた相手に対する敬意の表れです。

 おもしろいもので、相手の都合も考えずに話す人ほど、逆に相手から自分の都合も考えないで話をされると憤慨します。要するに「自分がやるのはいいけれでも、相手がやっちゃダメ」なんて都合のいいことを考えている自己中心者です。ですから、そんな人とは拘らない方がいいでしょう。拘れば拘るほど時間を取られ振り回され、単に利用されるだけですので。


 先日も私が励まし応援してきた、就職したての新社会人からいきなりメールが来ました。

「仕事がもう嫌になりました。特に上司に飽き飽きです。もう死にたいです。どうしたらいいのでしょうか? 今すぐ話せますか?」

 丁度、顧問先の役員会に出席中でしたので、すぐさま次のように返信しました。

「すみませんが、今会議中で今日は深夜まで会議と仕事が続きます。ですから、日を改めてお互い時間の取れるときにじっくり話しませんか? 私は以下の日時であれば大丈夫ですので、後でいいので、その中で都合のいい日時を知らせて下さい。お会いする場所は、私の事務所でもいいですか? それから、私の今日のブログを読んで下さい。少しは元気になると思いますよ!」


 まったくの赤の他人ですから、本来ならばお会いする義務もなければ責任もないのです。しかし、私は母譲り性格なのでしょう。悩んでいる人、苦しんでいる人を見ると、ほっとけないのです。

 この世に生まれてきたのも、今のコンサルテントとしての仕事をしているのも、人の相談に乗り、激励・応援することが使命だと思っています。ですので、悩んでいる人、苦しんでいる人から会いたいと連絡を頂いたら、都合がつく限り、できるだけお会いして相談に乗ってきました。

それをもう25年やっています。ある種のライフワークであり、生き甲斐でもあります。また、バカで一人では何もできない私が今この世に存在している意義だとも思っています。


 話を元に戻しますが、相手の都合を考えて話すことは、品格のある人間として自分の評価を高めることでもあります。

それが結果的には、成功に必要な人からの信頼や応援をもたらせてくれるのです。

 紹介したメールを送ってきた新社会人のような若者の多くは、そのことに気付いていません。自分の言動が相手にどのように影響を与えるのかを考える習慣がないのです。

 本来ならば家庭で学んでおくべきことです。が、今は親に品格がないためか、子供に教えることがなくなっているのです。