問題や悪いことは直ちに報告しよう

「あれ~ 先月の売上と利益が極端に減ってるけど、なんでだろう? おかしいなあ……」

「社長すみません! 昨年より契約していたE社との大型取引が途中解約になりまして……」

「なに! 当社の現売上の三割になる、あのE社との取引が? 来月は決算月だぞ! なんでもっと早く教えてくれなかったんだ!」

「実は、E社に再三に渡ってお願いしていたのですが、もう競合他社に変更したとのことで、最終的にダメなのが先週わかりました。それと平行して、F社にも営業をかけていましたので、もしかしてF社と成約できるかも知れないと思いましたので……」

「F社との商談の件はまったく別の話だろう! 決算までにこの穴埋めをしなければ、今回の株主総会は乗り切れんぞ! 第一、今月以降もこんな状態が続けば、大幅な減収減益で創業以来初の赤字決算に転落だ!」

 この話は実際にあったことです。この会社の株価は、E社との取引がなくなったことが公表された瞬間急落し、しばらくの期間ストップ安で止まりませんでした。

 その責任を取らされて、社長は株主総会で辞任に追い込まれました。

「経営陣がこんな悪いニュースをすぐに公表せず、意図的に隠し続けてきたことは犯罪だぞ! 適切なコーポレート・ガバナンスやタイムリーなディスクロージャーはどうなっているんだ! 株主をバカにするな! 経営陣は責任を取れ!」と、怒った株主の一人が株主総会で経営陣に詰め寄りました。

この実例は、問題や悪いことが起こった場合、直ちに報告しなかったことがどれほど悪い結果をもたらすかを示したケースです。

問題や悪いことが起こった場合、すぐに総責任者である社長に報告がいくようにするためには、相当な働きかけが必要です。普段からそうするよう関係者に継続的かつ徹底的に訴える必要があります。

また、誰も自分に不利になること、責任を取らされることを報告したくありませんから、毎回、報告者の正直さ誠実さに対し、高い評価と感謝の印が必須です。