私は接待するほうも、接待されるほうも大の苦手だった。特に、米国に二十年もいると、銀座・六本木・赤坂などにある「超」高級クラブや一流料理店での日本的な豪華な接待にはとてもついていけなかった。
正直言って、接待するのもされるのも嫌でしょうがなかったのだ。とても気を使うからだ。そもそも接待の意義が理解できていなかった。
実際米国にいたときは、接待と言っても簡単なビジネスランチで済ませることが多かったが、相手も私もそれで十分ことが足りていた。
しかし、接待が日本のビジネスにおいて大事な対話の場であることを、後になって痛感させられる事件が起きた。大事な顧客を競合他社にとられたのだ。日中の会議などでは、なかなか相手も本音で思い切ったことが言えない事情を私は気づかなかった。
夜のリラックスした会食やお酒の場では、言えないことでも結構言えたりする。雰囲気やお酒の力を借りることができるからだろう。
日本人の場合、そんな場がなければ、不満や言いたいことが溜まりに溜まってきて、突然「契約破棄」なんて恐ろしい形となって爆発する。そうなるともう手遅れ。
接待嫌いな私は、それで何度か大事な顧客を、「接待の達人」である競合他社にとられたことがある。接待の価値を認めず一切接待をしていなかったのだから、自業自得といわれてもしようがない。
必要以上に派手で豪華な接待は、相手も戸惑うので必要ないと思う。が、定期的に「ガス抜き」的な接待はする必要がある。
なぜか? 仕事ではお互いに構えているものだ。その上、忙しい日中では、センシティブで時間のかかる問題はなかなかじっくり話せないからだ。また、お互いビジネスパーソンである以前に、人間としてもっと知り合い、理解していたほうが、仕事もスムーズにいく。
若手の場合は、接待がある際、相手とのコミュニケーションが上手くとれるよう、最大の気配りが必要だ。特に、接待の場で、細かい気配りをすることで、普段なかなか伝えられない感謝の気持ちを伝えるお膳立てをしっかりする。
要は、接待する側であれば、自分がしてもらったら、喜ぶことを相手にするだけ。接待される側であれば、その心づくしや普段のお付き合いを感謝するよう、プレゼントぐらいは用意しておくべきだろう。