私は、どんなに立派なことを言う人でも、遅刻をする人は絶対に信用しない。

 それは、自己管理ができていない証拠だからだ。

 そんな偉そうなことを言う私こそ、新人時代は遅刻の常習犯だった。とてもいい加減な人間だったのだ。だから、誰からも信用されなかった。

 遅刻をする人には共通点がある。“自分に甘い”のだ。

 もし自分に厳しければ、もっと言うと、もし、自分のやっている仕事に厳しければ、仕事で遅刻するようなことは、例外中の例外(地震や交通事故など)を除いて、まったくあり得ない。

 よく、電車が遅れることを遅れた理由にする新人がいる。とんでもないことだ!

 なぜなら、電車は時々遅れることはわかりきっている。だから、遅れることを想定して、早めに到着できるようにするのが社会人であり、仕事をする上でのプロとしての行動だ。

 それを私は新人の頃、嫌というほど先輩に聞かされた。守れなければ、自己管理不足ということになり、クビである。

 つまり、そこで働き続けたければ、いかなる理由があろうとも絶対に遅刻をしないこと。これが、私が勤めていたプロフェッショナル・ファームの掟なのだ。

 これは当たり前だ。会社からお金をもらって仕事をしているのだから、自分の都合で遅れてきたり、早く帰ったりできるわけがない。

 覚えていてほしい。遅刻をするということは、その会社や相手をバカにしている行動であることを。そして、自分が自己管理のできない無能な人間であることを、皆に公表していることにもなるのだ。

 私は、新人の頃、どうしてもいまひとつ頑張れなかった。「頑張ろう!」「頑張らなければ!」と言い聞かせているのに、だ。その理由がなぜだかわからなかった。

 あるとき、先輩に言われた。

「そんなに遅刻ばかりしていて、よくやる気が出るな。朝から負け癖をつけていると、一日中負け続けて、一生負けの人生を送るぞ!」

 私は、ハッとした。〈自分にやる気が出てこないのは、朝から負けていたからなのだ!〉と。それから、何がなんでも遅刻だけはしないようにした。むしろ、どこに行くにも、必ず五~十分前には着くようにした。そんな小さな努力でその日一日が充実し、やる気がどんどん出てきたから不思議だ。