仕事ができる人というのは、自分のことだけを考えている人ではない。常に周りの状況を見渡し、把握しようとする人である。

 困っている人がいたら、真っ先に手を差し出す余裕を持っている。そのような人は周りから尊敬される。自分に厳しく、他人に優しいからだ。

 繰り返すが、私は新人の頃、上司や先輩が困り、悩むほど本当に仕事ができなかった。

「あ~あ~、なんであんなやつ採用したのかなあ……」

 私がいないところで、絶えず溜め息をつく上司や先輩がいたらしい。同僚たちが同情し、後からそっと教えてくれた。

 さんざん悩み葛藤した結果、私にできることは、仕事のできない分、気配りで補うしかないということを悟ったのである。

 そこで、情報を欲しがっている上司や先輩のために、プライベートな時間をすべて使い、情報収集に徹したり、大量のコピー取りで困っている同僚がいたら、コピーを手伝ってあげたりした。

 専門的な仕事が全然できず、邪魔者扱いされていたので、その分挽回しようとして気配りを徹底させた。

 そのお陰で、徐々に周りから好かれ、評価され、感謝されるようになっていった。

「浜口は、仕事はお世辞にもできるとは言えないが、よく気が利くなあ。いざとなったら文句一つ言うことなく一生懸命手伝ってくれるから、便利なやつだ」

 これが当時の私への評価だ。仕事で評価されず、便利屋として都合のいい部下として見られていた。

 だが、クビ対象になっていただけに、雑用でもなんでもやらせてもらえるだけで、私は嬉しかった。

〈こんな僕でも、世界的な国際会計・経営コンサルティング会社に役立っているんだ! こんなすごい優秀なプロフェッショナルと少しでも仕事がいっしょにできるなんてありがたい。やったー〉と。

気配りが、あなたにチャンスをもたらす

 そうこうしているうちに「便利屋・浜口直太」に不思議なことが起こり始めた。上司や先輩たちが、レベルの高い仕事を徐々にくれるようになったのだ!

 なんでも喜んで手伝っているうちに、上司や先輩たちが、私にもチャンスを与え始めたのだ。それものろいし間違いが多いのに、である。

 なぜか?

 それは、上司や先輩たちに気に入られたからだ。

 社内ではいつも競争が激しかった。

 目に見えないところでの足の引っ張り合いなども頻繁に行われていた。

 しかし、私はそんなことに目も向けなかった。いや、自分が生き残ることで必死で、そんなことに目を向ける余裕すらまったくなかった。

 上司がいつも言うことが骨身に染みていたのだ。

「我々が仕事をする目的は、いかにたくさん稼ぐかでも、早く出世するかでもない。いかにお客様をいつも満足させられるか、にあるんだ。そのためのカギが、徹底した気配りだ」

 自分が気配りをすることで、職場での仕事がうまく回るのであれば、これほど嬉しいことはない。

 自分の気配りが会社に貢献し、皆に喜ばれる。そんなことが実感できるなんて、最高ではないか。