私には、特別な能力はなかったので、自分ができる仕事を精一杯やろうと思っていました。お客様にお渡しする資料をコピーするときも同じです。まず最初に「お客さまに一番喜んでもらえる資料って何だろう?」と考えるようにしたのです。

 あるとき上司に三部コピーを取るように頼まれたことがありました。その資料を見たら、小さい文字で斜めにプリントされており、紙には汚い点々がついています。

 誰が読むのかを尋ねると、三人のお客様にお出しするとのこと。しかも、お客様の中に八十歳の会長さんがいることがわかりました。

 老眼鏡をつけても、こんなに小さな文字では読みづらいだろうなと思いました。

 そこで、修正液で汚れを消し、拡大コピーをして、原稿の文字をまっすぐ読めるようにコピーをするときに紙の位置を調節しました。

 また、お客様が増えたときに備えて、余分に六部コピーしておきました。

 せっかくの貴重な商談の時間を、追加のコピー取りのために、五分、十分お待たせしたら、お客様にも上司にも嫌な思いをさせるだろうと思ったからです。

 当日、お客様が五人みえました。そこで用意していた五部を手渡したら、上司はビックリ!

 あの目は一生忘れられません。本当に部下を信頼しきった目でした。資料を見たら、字は読みやすくなっているわ、きれいに印刷されているわで二度ビックリです。

 「実は、八十歳の会長さんがいらっしゃるので拡大コピーしておきました」

 と説明したら、会長さんが感動してくれました。

 「すばらしい、一流のコンサルティング会社は、コピー一つとっても超一流ですね」

 上司をすごく褒めたんです。

 その後、上司は私のことを「彼に頼めばちゃんとお客様を喜ばせてくれる」と評価するようになりました。気配り一つで、ここまでお客様にも上司にも心から喜んでもらえるのです。