「出てけ!」「帰れ!」

 上司に報告をしているにもかかわらず、何度も怒鳴られました。理由はとても単純で、上司の状況を考慮せず、自分中心に報告していたからです。

 たとえば、緊急に処理しなければならない案件を上司が行っている。一分、一秒を争いながら、猛烈な勢いで仕事をこなしている。

 でも、こちらも上司に報告すべきことがあるので、トコトコと上司の机の前まで行き、仕事の邪魔をして、一方的に話しかけるわけです。

 すると、「出てけ!」「帰れ!」の一言で終わる。

 報告書をビリッと破かれたこともあります。ある仕事のブレーンを取材し、頑張って三十枚ぐらい書いた報告書を持って行ったときのことです。

 その上司は何十人も部下を抱え、周りからどんどん報告書があがってくる。にもかかわらず、私は三十ページにも及ぶ長い長い報告書を書いてしまった。

 上司は報告書をペロッとめくった瞬間、ビリッと破き、私に一言。

 「今、すぐに知りたいから報告してくれと言っているんだ。私が三十ページもある報告書をこれから読んで理解しようと思ったら、どれくらい時間がかかると思う? 同じことを何十人もの部下がやっていたら、私は仕事ができなくなる。報告とは、そういうことを考えたうえでするものだろう」

 もう一生忘れません。報告とは受ける側の気持ちでするものであることを。

 それ以来、何か発言したり報告したりするときに、「相手が聞きたいことは?」「相手はどのくらい時間があるのか?」「このタイミングで言っていいのか?」「この場所で言っていいのか?」という点を考えるようになりました。さもなければ、上司も私もムダな作業に終わってしまう。上司は報告書を破るという厳しい行為で、他人の立場で考える大切さを教えてくれたのです。