新入社員のときに、「周りに社員が十人いたら、まず、そのうちの六人に認めてもらう」という目標を立てました。英語も話せず、ビリで入社したので、とにかくクビになるのだけは絶対に避けたいと思ったからです。

 ところが、上司にほめられるどころか、叱られる毎日が続いたのです。「なぜ、こんなに頑張っているのに、認めてもらえないのか?」と悩みました。

 でも、今から振り返れば、私の行動は問題だらけでした。上司が仕事を頼んだ理由や、仕事の目的をよく考えずに、「このぐらいやればいい」「このタイミングで提出すればいい」などと、自分勝手に判断していたからです。

 そのせいで、レポート一枚で簡潔に報告すべき文書を、十数ページにも渡って作成したり、締切までに資料を提出できなかったりしたこともあります。

 どんな仕事も期日を過ぎれば評価はゼロ点です。

 反対に必要以上に早過ぎても問題です。速さを最優先し、ミスだらけの資料を提出すれば、こちらも評価は限りなくゼロ点に近くなるからです。

 まずは、上司が考える優先順位を確認することが先決です。

 会議の資料づくりを頼まれたら、どのぐらいの分量が必要か、どのタイミングで提出すればいいのか、などを具体的に確かめておきます。

 このように上司の判断基準を踏まえて仕事をしているうちに、仕事の基本もしっかり身につけることができました。

 特に、私の上司はデキる人でしたから、彼の仕事のやり方を徹底して盗むことができたのです。回数を重ねるうちに、上司が要求するレベルもわかってきます。

 「仕事の出来は六割でいいから、早急に仕上げたほうがよさそうだ」

 「よくわからない所もあるな。ひとまず、この部分は未完成でもいいから、後で相談しながら見直していこう」

 こうした判断力は、どんな仕事にも応用できます。おかげでゼロ点だらけの評価が、日に日に上がっていきました。