先輩E 「あれ、もう帰るの?」

「はい、友人と飲み会がこれからありますので」

先輩E 「いいね~ ところで、今日中に提出するよう言っていた報告書どうした?」

「大体終っています。明日中には完成します」

先輩E 「え! 明日! 何言ってんだよ。オレは今日中に報告書が必要だって言っただろう! それなのにどうして明日なんだ?」

「すみません、今日中は無理なんですが……。明日でよろしいでしょうか?」

先輩E 「ふざけるな。飲み会する時間があって、何で締切のある仕事はできないんだ! 人をバカにするのもいい加減にしろ!」

「でも、前々から決めていた会食なんです。もしかしたら、うちの顧客になるかも知れないです」

先輩E 「新しい顧客を開拓するのも大事だが、既存の顧客への仕事の方がもっと大事だ。この報告書は明日、顧客との早朝会議で発表しなければならないんだ。大事な報告なんだから、できていなければ顧客は怒るだろう。もしかして、契約を打ち切ってくるかもしれないんだぞ! その時は、お前の責任になるからな」

「先輩、脅さないで下さいよ……」

先輩E 「脅す? とんでもないよ。相手は高いコンサルティング料を払っているんだ。それで、報告が遅れたら、そらりゃあ怒るに決まってるだろう。オレだったら、間違いなく契約を切るね。そんな無責任なコンサルタントと付き合いたくないからね」

「それではどうしたらいいのでしょうか?」

先輩E 「決まってるだろう。こんな状況で飲み会なんかに行くバカいるか! なんとか理由作って今日の飲み会は簡便してもらえ。また、仕事じゃないだから、今日の穴埋めはすれば、また今度すればいいじゃないか? それより、顧客の信用を維持することに全力を尽くすべきだ。たとえ徹夜しようと、絶対に報告書は終らせることだ! それが、責任感のある人のやることだ」

 当時の私は、無責任極まりなかった。どうせ大して仕事はできないので、最後は上司や

先輩がやってくれるだろうという甘えが心のどこかにあった。それで、私の信用がどんど

んなくなっていった。これを機に、自分が最終責任者のつもりで仕事をするようになった。