今日は、雑誌『留学ジャーナル』でインタビューを受けた記事(以下)をご紹介します。

ちなみに質問をしてくださった方は、留学ジャーナルの佐藤江利奈さん( キャリアカウンセラー)です。


記憶力なし、理解力なし

勉強が大嫌いな落ちこぼれだったんです。

佐藤 幾冊かの御本を拝読させていただきました。大変おもしろかったのですが、それによると、成功のきっかけは高校時代の留学だったそうですね。

浜口 その通りです。それまでの私は大がつくほど勉強が苦手で、自他とも認める落ちこぼれでした。それも、誰よりも一生懸命授業を聞いて、宿題もちゃんとやっているにもかかわらず、勉強ができないんですよ。どうやら、理解力や記憶力がまったくなかったみたいで(笑)。

だから、私を昔から知っている友人は、バカのひとつ覚えのように、苦手なことに挑戦し続けて、数々の不可能を可能に変えてきた私のことを「日本のフォレスト・ガンプ」と呼ぶようになったのです。

佐藤 素晴らしいニックネームですね。

浜口 そのきっかけを与えてくださったのが、高校3年生の担任だった英語の先生です。極端にできない私のことをかわいそうに思ったんでしょう。高3の夏、アメリカにホームステイへ行くように勧めてくださったんです。

佐藤 もともと海外に興味はおありでしたか?

浜口 とんでもない!国語も英語も大嫌いだし、勉強する気もサラサラありません。「行きたくない」とお断りしたんです。でも、先生が親を説得してしまったものだから、イヤイヤ行くことになってしまって・・・。

佐藤 その留学が、人生の大きなターニングポイントになられたんですよね。

浜口 まさに「運命が変わった」と言える大きな出来事でした。ホストファミリーが素晴らしい方たちで、彼らと会話ができないもどかしさから、英語を勉強するようになったんです。そのうちに、「英語って世界共通言語なんだ!英語さえできれば、世界の人とコミュニケーションできるんだ!」という光が見えてきた。また、アメリカの教育はすごく自由で、「ドライビング(運転)」や「ゴルフ」みたいな課目もあって、すごく楽しかったんですよ。そこで「勉強は受験勉強だけではないんだ。偏差値だけで判断されることはないんだ」と、違う光も見えてきて・・・。日本では超がつくほど落ちこぼれだった私は、たった1ヵ月の留学で「将来はアメリカで生きていこう」と決心したわけです。

佐藤 英語というものが「勉強」ではなく「コミュニケーションのツールである」ということを、肌で感じられたんですね。

浜口 昔から「これ」と決めたら頑張るほうなので、帰国後は一生懸命、英語を勉強するようになりました。同時に、アメリカで生きていくにはどうすればいいかを調べていく中で、国際経営コンサルタントとして活躍している方と出会い、「僕の天職はこれしかない」と。高3で僕の人生は決まったと言えるでしょうね。

壁がどんなに高くても

諦めなければ乗り越えられる

佐藤 話が前後しますが、浜口さんが代表を務められているJCIのお仕事を教えていただけますか?

浜口 経営コンサルタントというのは企業のお医者さんであり、困ったり悩んだりされている企業、あるいは社長さんをサポートするのが仕事です。ただJCIの場合は、設立したのがアメリカなので、ネットワークが世界中にあるというのが特徴です。また、第三者としてアドバイスするだけでなく、我々も経営チームに入って運命共同体になる・・・つまり、リクスも一緒に負うというところが、他社と違う点かもしれません。

佐藤 国際経営コンサルタントを志し、実際にその天職だと思う仕事に就かれたわけですが、「なりたい」と「なれる」は違いますよね。どんな努力をされたんでしょうか。

浜口 何十回、何百回という奇跡があったんですよ(笑)。

佐藤 奇跡ですか(笑)。でも、御本を読んだ限りでは、浜口さんの行動力がすべての不可能を可能にしたように感じましたが。

浜口 確かにそうでしょうね。名もない高校生だった私が、憧れの国際経営コンサルタントの方に出会えたのも、その方の本を読んで、無謀にも「会ってください」とお願いの電話をかけたことが始まりですから。ただね、本来のバカはそう簡単に直るものではありませんでした(笑)。アメリカのビジネス・スクールに入るために必死でTOEFLの勉強をしたんですが、どんなに勉強しても、入学に必要な500点が取れない。30回ぐらい受けたから、最後のほうは試験官より詳しくなっちゃって、受験場での注意事項を私が指示していたぐらいです(笑)。

佐藤 それでも、負けずに頑張られた・・・

浜口 執念ですよね。だって私の目標は「国際経営コンサルタント」になることで、「500点」を取ることではないですから。

佐藤 受けたビジネス・スクールがすべて不合格になったあとも、諦めずに学部長に直談判して入学許可をもらったり、入社基準を満たしていなかったにもかかわらず、当時から世界最大規模だった経営コンサルティング会社・KPMGピート・マーウィックのニューヨーク本社に採用されたりと、自らの手で道を開かれてきましたよね。苦境に立たされたときの心の強さと行動力は、普通の人にはないものを感じます。

浜口 どんなことでも行動を起こさないと何も始まらないし、諦めたらその時点で可能性はゼロになると私は思っているんです。高校3年の卒業時に、これから先80歳までの「人生の計画」を紙に書きだしました。それを実現させるためにも、途中で投げたり、諦めたりしているヒマはなかったんですよね。

佐藤 壁がどんなに高くても、諦めなければ乗り越えられる・・・浜口さんの生き方は、それを私たちに教えてくれますね。



弱点は克服できる

弱点こそが長所になる

佐藤 浜口さんの素晴らしさは、苦手なことから目をそむける人が多い中で、逃げずに真正面から向き合い、結果を出されてきたことだと思います。そこになにかこだわりがあったんでしょうか。

浜口 自分に挑戦するのが好きなんです。高校時代までは水泳に打ち込んできたのですが、その中で「何事も、一番の競争相手は自分自身」ということを学びました。一時的には目標とする競争相手がいたとしても、最後は必ず自分自身と戦うことになる、と。

佐藤 自分と戦うことは、つまり、自分の弱点を知るということでしょうか。

浜口 そうですね。人間には誰でも弱点はありますが、私は、弱点というのは克服できると思っているんです。もっと言えば、弱点を強みに変えることができる。

佐藤 強みに?

浜口 はい。私の場合、ずっと国語ができなかった。つまり、つたない文章しか書けないということですよね。それでも私の書いた数々の本が、多くの人に読んでいただけているのは、「小学生でも読めるやさしい文章」だからなんです。「国語ができない」という弱点は、その分「多くの人の心に届くやさしい本が書ける」という強みになるんですよ。

佐藤 そういうポジティブな発想ができるかできないかで、大きな違いが出てきますね。

浜口 はい。それに、人より苦労するって、すごくいいことなんですよ。同じ80点を取るのでも、簡単に問題が解ける人は成長しない。私のように、何度も何度も追試を受けて、その度に必死に勉強して、やっと80点を取った人のほうが成長できる。「結果も大事だけれど、そこまでのプロセスこそが大事」というのが私の持論です。

佐藤 結果を急がず、自分が納得できるまで頑張れば、たとえ時間がかかっても人間力がつくというとですね。大変勉強になりました。


くすぶっていたローラースケート時代

佐藤 バイタリティに溢れ、自ら道を切り開かれてきた浜口さんですが、キャリアの中で「挫折」はありましたか?

浜口 それは何度もありましたよ。アメリカで希望の会社に就職したあと、「こんな雑用をするために入社したわけではない!」と荒れたこともありました。でも、最大の挫折は、就職前の「ローラースケート時代」ですね。その時の私は「生きた屍」でした。

佐藤 その、「ローラースケート時代」とは?

浜口 アメリカのビジネス・スクールに行くために、それこそ人生を賭けて死ぬほど勉強したのに、7校すべてに落ちてしまった時のことです。さすがの私も「人生、これで終わった」と思いました。受かることを前堤に渡米していましたから、アメリカに住む姉の世話になりながら、生きる気力もないまま、ダラダラと過ごしていたんです。まさにジョブレス・ホームレス・ホープレスの時代。そんな時、知らないアメリカ人から、「お前、元気がないな。だったら一緒にローラースケートをやらないか」と誘われました。やることもないし、ヤケ気味で始めたんですが、みんなの期待に応えようとスケートに打ち込むうちに、努力する楽しさを再認識。生まれ変わるきっかけとなったんです。

佐藤 まわり道をしたけれど、結局はいい経験になったわけですね。

浜口 はい。私がその後、就職試験に合格できたのも、ローラースケートをやっていたからだと思います。私たちはローラースケートをやりながらピラミッドを作るという、アクロバットなパフォーマンスにトライしていたんですが、みんなが大声を出さないとコミュニケーションが成立しないんですよ。お陰で、就職試験では誰よりも大きな声で質問に答えられた。入社基準を満たしていないのに採用されたのは、「コイツは迫力があるな、元気のいいヤツだな」というインパクトがあったからではないかと思っているんです(笑)。それに、挫折の経験があるからこそ、私は本が書けるのです。負けたり、失敗したり、落ち込んだり、そんなできそこないの人間でも、ちゃんと夢を叶えることができるんだと、多くの人に勇気を持っていただきたいと思っています。

出会いを糧に人は成長するんです

佐藤 浜口さんの強さは、ご自分を触発する多くの方々と出会われたからではないかと思うのですが。

浜口 まさに、出会いは財産であると感じています。人から学ぶことほど、尊いものはありませんから。

佐藤 憧れたり、目標としている方も多いんでしょうか?

浜口 多いですね。たとえばKPMG時代の私の上司。いまだかつて、あんなに早く仕事をする人は見たことありません。事務処理能力はもちろん、決断も早いし、行動もスマート。「彼が通ると風が吹く」と言われるぐらい歩き方も速かった。そして、努力の人なんです。何度、「彼がしてきたことなんだから、私もやらなきゃ」と触発されたかわかりません。

佐藤 単なる仕事マシンではなく、人間として魅力的な方だったんですね。

浜口 大きな憧れでしたね。彼が仕事場に来ると空気が変わるんですよ。オーケストラの指揮者が登場したような感じでしょうか。みんながバラバラに仕事をしていた現場が、彼が来ることでピッとした緊張感が走って、一斉に同じ流れができる。職場が一体となって、大きな感動を生み出すんです。今でも、仕事をしている中で「彼だったらどんな判断をするだろう」と考えることがあります。

佐藤 そんな出会いのチャンスを、積極的に作ってこられたんですね。

浜口 怖いもの知らずですから(笑)。相手とどれだけ身分が違おうが、「会えるわけがないよ」と笑われようが、実際に動いてみないと、ホントにそうなのかはわからないですから。

佐藤 最近、キャリアカウンセリングをしていると、就職活動する際にどういう仕事がしたいのかを具体的にイメージできない方が多いように感じるんです。私は、身近な人でも、留学先でも、どんな人でもいいからできるだけ多くの人に接し、その人の仕事について1日がイメージできるぐらいに、深く話を聞いてみることを薦めています。どんなことが大変で、どんなことがやりがいなのか、たくさんの人の価値観に触れ、自分がその話や仕事をどう感じるのかアンテナを研ぎ澄ませておくといいと。

浜口 それは素晴らしいアトバイスですね。出会いを糧に人は成長するのものですし、出会いには多くの発見がありますから。

佐藤 そんな出会いのチャンスを増やすには、やはり自ら行動することが大事ですよね。少しでも興味があったら、「この人に出会うのは無理」などと決めつけずに、自分からアタックしてみる。これから夢に向かっている人には、ぜひ、浜口さんのようなポジティブな行動力を見習っていただきたいですね。

借金をしてでも

留学を経験したほうがいい

佐藤 最後に、経営者としての浜口さんにお尋ねします。現在のビジネス社会で求められているのは、どういう人材でしょうか。

浜口 プロ意識のある方ですね。受け身ではなく、「これだけの結果を出すから給料をください」と言える人。ある意味、プロ野球選手のような明確なプロ意識が必要だと思います。ただし、それだけでは個人プレイになるので、人とうまく係わる能力、協調して共存する能力も求められます。私は「人間関係マネジメント力」と呼んでいますが、これら2つをバランス良く持っていれば、どこに行っても通用すると思います。

佐藤 スキルを持った上で、人間力もある人物ということですね。そういう方はやはり、浜口さんのように、苦労や経験を重ねて結果を出してきたのでしょうか?

浜口 そう思います。少なくとも、がむしゃらに努力した経験がない人は、リーダーには向かないような気がしますね。

佐藤 留学中の人や、これから留学しようと考えている人に対して、アドバイスはありますか?

浜口 私は「みんな留学すべき」だと思っている人間です。語学留学だっていいし、極端な話、バックパックを持った一人旅だっていい。ともかく違う文化、習慣、考え方の中に身を置くことで視野が広がりますし、自分自身の長所や短所も見えてくるんです。それに、留学というのは「たった一人になる」という貴重な経験ができる機会なんです。もちろん多くの友人もできるでしょうが、最終的に「頼れるのは自分一人」というとを自覚する。若いうちにそういう環境に自分を置いて、自己発見をすることは、すごく大事なことだと思いますね。極端な話、借金をしてでも日本を飛び出してみたほうがいいと言いたいぐらい(笑)。たとえ、すぐに経験を活かせなくても、人生に大きな転機が訪れたときに、留学経験をしていたほうが強い。「海外の文化に触れてきた。言葉の違う国でコミュニケーションを取り、暮らしてきた」という経験が、必ず活きてくると思うんです。

佐藤 最後に、これを読んでいる読者に、元気が出るメッセージをいただけますか?

浜口 「若いんだから、やぶれかぶれに挑戦しなさい」ですね。考える前に動け、ということです。私は商談に行くと、考えるより前に「はい、できます」と答えていることが多いんです(笑)。で、会社に戻ってから「ホントにできるのかな、どうやったらできるんだろう」と考える。でも、おもしろいもので、やってみたらほとんどできるんですよね。もちろん自分一人の力では無理だから、専門家の知恵や仲間の力を借りますが、その気になれば本当に不可能なことは少ない。まさに、私の人生のように・・・。だからみなさんも、臆病にならずに、いろんなことに挑戦してほしいですね。その過程のすべてが、あなたのキャリアになるのですから。