私がまだアメリカで働き始めたばかりのころのことです。突然、ミスターAに呼び出され、こう言われました。

「君にはプロ意識がなさ過ぎる! 安月給だと思っているかもしれないが、新人で成果を何も上げていないのだから、報酬が低いのは当たり前だ。しかし、たとえ一セントでも仕事の対価として報酬を得たら、もうその人はれっきとしたプロだ。プロの世界では、結果を出せない人間はいらないよ!『結果は出せなかったけど、新人として一生懸命やったのだからしょうがない』という言いわけは許されない世界なんだ。プロの世界は結果がすべてだ。結果が出せれば、君ではなく誰がその仕事をしてもいいのだ。今日から新人としての甘えと、サラリーマン根性を捨てろ!」

 彼の言葉にはものすごく説得力がありました。プロ野球の選手は何万回も素振りをして、手にたくさんの豆を作るほど努力をしても、本番でヒットが打てなければ評価されず、クビになります。数字がすべてです。

仕事の世界も同じなのです。


 では、結果を出すためにはどうしたらいいのでしょうか。

この答えのヒントを、デル・コンピュータのマイケル・デル会長にお目にかかったときに頂きました。

当時のデル社は、伸び盛りのベンチャー企業で、私は顧問という立場での出会いでした。

 その頃アメリカのコンピュータ業界は、巨人IBM社を筆頭に、熾烈な争いの真っ最中。デル社は、その競争の中で生き残りをかけて、大勝負に出たところでした。

お会いするなり、デル会長には、単刀直入に激しい競争の中を勝ち抜く秘訣は何かと質問しました。対するデル会長の答は次のようなものでした。

「保守的な大手企業は、あえてリスクを冒すような仕事はしません。成功率を予測し、手堅く仕事を進めます。でも当社の場合は、思いついたことはどんどんやってきました。元々失敗を覚悟のベンチャービジネスですから、多少リスクが大きくても、市場が必要としていれば、画期的なことにもどんどん挑戦してきました。要するに行動を続けたのです。何もしないで、ああでもない、こうでもないと考えていないで、そんな時間があるなら、『先ず行動しよう!』と社員みんなに言いました。そして、『行動すれば思わぬ運がついてくる』とも言いました。実際に当社の歴史を振り返ると、その通りになっています。これは、ビジネスの世界に限ったことではなく、人生にも同じことが言えると思います。少なくとも私の人生はそうでした」と。

 私は大きくうなずいていました。私が目指していることも、まったく同じだったからです。

結果を出すためには、まず行動すること。いたって単純ですが、なかなかできないのです。まず、頭で判断してしまうからです。

行動すれば、難しいことも意外に容易にできてしまうものです。動くことで、越えなければ問題点が明確なり、実現のために必要な支援が、周りからどんどん得られるからなのです。