仕事は「戦い」であり、会社は「道場」であり「戦場」だというのが私の持論です。

最近の新入社員の甘えた話し方、甘えた態度はどうも気になります。学生時代の気分が抜けきれないまま会社に来られたのでは、真剣に仕事をしている職場の人々が迷惑します。


 ある顧問先の会社での出来事です。

たまたま新人社員が電話をしているのを聞いてしまった私は愕然としました。自分の耳を疑いました。

「……ええっと~。今、上司はいないんですけどぉ~。どうしたらぁ~いいでしょうかぁ~……」

 この社員は、高校生の頃から成長が止まっているのではないかと、恐怖心さえ覚えました。

見るに見兼ねたため、電話が終わった瞬間、その社員に注意しました。

「あなたはこの会社に給料をもらって働きにきているのですよね? それとも遊びに来ているのですか?」

 言われた本人は黙り込んでしまいました。部外者の私にいきなり指摘されてビックリしたのか、あるいは、生まれて初めてそんなことを言われて戸惑っていたのかもしれません。


 このように、親や教師に甘やかされて育ち、気楽な学生時代を送った若者が多いようです。

しかし、一度会社という「道場」に入ったら、学生時代のようなわけにはいきません。言動から一切の甘えを排し、日々真剣勝負をしなければ、先輩や上司を味方にすることはできません。第一、真剣に仕事をすることで、はじめてその対価としての報酬を得られるのですから。

何かにつけて厳しく注意されているうちが花。何も言われなくなったり、無視されるようになったらおしまいです。この会社には不要な人間だというレッテルを貼られたのと同じことだからです。


 アメリカのコンサルティング会社で働いていた頃、私は国際部というセクションに配属されていました。

リーダーは、あのミスターAでした。会社の中では「お荷物」的な扱いを受けていたセクションでもありました。わずか30人のスタッフで2000社ものクライアントを抱えていたのですから、猛烈な忙しさです。

でも、文句は言っていられません。仕事ができなければクビになるだけですから、全員が必死になって働いていました。目の前の仕事に全力で取り組む毎日です。

当然、誰にも甘えることは許されません。甘えを一切排した真剣勝負のその仕事の結果、お荷物だった国際部は徐々に頭角を現し、会社の中でも注目される、模範的な部門となりました。そしてミスターAはどんどん出世し、それにつれて私もついでに昇進させて頂きました。

 職場での日常の積み重ねが、人生の一ページ、一ページを刻んでいるのだと実感すれば、日々言動をおろそかにはできません。甘えた言動などはもってのほかなのです。

ただ、仕事に真剣に取り組む中で生まれた疑問や相談ごとなら、大いに先輩や上司にぶつけてみるべきです。前向きの働きかけなら、先輩も上司も評価し、喜んで受け止めてくれるでしょう。