仕事をするうえで、先を読むことは非常に大切です。企業を相手に仕事をしていると、担当者や責任者が変わったために、それまでの方針がガラッと変わってしまうことがよくあります。現在進めている仕事と関係のある企業の情報には、特に敏感でなければなりません。 


 そのためには新聞や雑誌など、入手しやすい情報源を利用するのが近道です。私は毎朝、通勤電車に乗っている二五分の間に、経済紙四紙に目を通します。会社に着いてから、さらに別の四紙を読みます。その後は、経済・ビジネス雑誌を中心に主な内容をチェックします。関心のあるキーワードを見つけ、そこを重点的に読むので、短時間でも充分に頭に入ります。 


 私は仕事柄、経済新聞や経済雑誌を主な情報源としていますが、それにこだわる必要はありません。あなたの仕事に一番役に立つ情報を提供してくれる情報源を選び、可能な限り購読することをお勧めします。 


 新聞を読むことだけでなく、通勤電車の中は情報の宝庫です。中吊り広告や車中に張ってあるさまざまな広告は、要点だけをわかりやすく、凝縮して表現していますから、眺めているだけで旬の話題が見えてきます。自分なりに考えながらじっくり見れば、次にヒットしたり、売れそうなものが見えてきて、ビジネスセンスを磨くことにも役立ちます。 


 会社に着くと、メールのチェックに始まり、電話やファックスへの対応、会議などの仕事が待ち受けていますから、情報収集に当てる時間はほとんど取れません。一日の仕事を充実させるには、朝の通勤時間を有効に使うことが大切です。なぜなら、スピーディーに仕事をこなすために必要なのは、瞬時の的確な判断だからです。今、世の中で起こっていることを知り、時代の変化を把握することは、意思決定をする際、間違いを最小限にとどめるための最も効果的な方法なのです。ですから、新聞や雑誌だけでなく、時間の許す限り、本もたくさん読むべきです。自分一人でできる体験は限られていますが、多くの本を読むことで、価値観の違うたくさんの人の体験を知り、考え方を吸収できます。 


 私は、時間ができると本屋へ行って、長時間立ち読みをします。本のタイトルを眺めているだけでも、今何が流行っているのか、これからどんなことが起こりそうなのかを学ぶことができます。同様に、テレビのドキュメンタリー番組を観たり、講演会で人の話を聞くことも大いに参考になります。 


 私は、その日に読んだ新聞や雑誌の記事、本の内容で気になるテーマがあると、その日のうちに誰かと意見交換をすることにしています。それによって新たな発見があり、理解が深まるだけでなく、そのテーマに関しての問題意識をずっと持ち続けられるからです。こうしていると、かなり時間がたった後でそのテーマに関連する事件が起こった場合、すぐに関係づけられるだけでなく、迅速で的確な対応ができるようになります。