取り組み方次第で、どんな仕事からも学ぶことができます。同様に、付き合い方次第では、どんな人も自分にとっての先生になります。 


 職場にメール係の黒人の少年がいました。彼の仕事は、会社に届いた郵便物を仕分けし、カートに乗せて各職場にメールを配って歩くことでした。メール係の少年と話をする社員はほとんどいませんでしたが、私は根っからの人好きなので、よく彼と話をしていました。ある日彼が、「うちの会社によく来るMさんが、この間、Sさんと話していたよ」と話してくれました。 


 それを聞いて、私はあわてました。Mさんは大事なお得意さまで、Sさんは当社のライバル会社の社員です。嫌な予感がしたので、さっそくMさんに電話を入れると、コンサルティング会社を変えてくれとSさんに口説かれていた、と打ち明けてくれました。メール係からの情報のおかげで、大事なお客さまを失わずに済んだのです。 


 さまざまな人種の人々が同じ職場で働いているアメリカで、人間はみな平等、人種、性別、キャリアは関係ない、ということを学びました。こうした考え方で人と接していると、人は自ずから謙虚になり、誰からでも学んでやろう、という気持ちになるものです。 


 それと同じように、過去にその人が何をしてきたか、どんな実績があったのかということも、現在の仕事には関係ありません。大事なのは、今何ができるか、ということです。以前、大企業から転職してきた人を採用したことがありましたが、その人は、過去の自分の地位や仕事にこだわり、当社では新聞を読んでばかりいたので、すぐに辞めてもらいました。