「質問の内容で、ほとんどの人はその人ができる人かどうかわかる。話し合いを後向きにするような質問をする人は、社会人として信用を失う」



 最近名詞の後に「力」をつけるのが流行っているようです。

我々書く側からすると非常に便利なのです。「力」をつけるだけで、その度合いのようなものを表現できるからです。

 できる人になるという観点から、その「力」の種類を考えると、質問する力、即ち「質問力」は普段から非常に大事な能力だと思います。


と言うのは、ビジネスの世界では、相手も我々側も忙しいため、会議一つとっても、できればお互い単刀直入に話したいもので、その際「質問力」がカギになるのです。

相手も効率よく会議をしようとしている時、バカな質問をする人が一人でもいれば、話し合いは白け、ネガティブなムードになってしまいます。会議も一瞬にして阻止され、全員の時間のロスにもなります。


 先日も、ある商談に出ていて、そこにいるのが厭になるくらいレベルの低い人がいました。

「貴社の商品は素晴らしい! 価格が合えば、ぜひ大量に購入し、弊社系列の全国の販売店に卸したいです」

「ありがとうございます。我々も大量に買って頂けるなら、これほど有り難いことはありません。値段はご希望に添えるよう、できるだけ頑張ります!」

「じゃあ、条件交渉に入りましょうか……」

「ちょっとお待ち下さい。おたくは、うちの商品のどこをお気に召されたのでしょうか? 全般的に競合他社の方が質は高く、また商品のタイプによっては、他社の方がかなり安いようですが……」

 せっかく相手も買う気で値段と数量を含めた条件交渉に入ろうとした直後、会議に同席していた若手社員が、今更ながら相手に買う動機を質問したのでした。

透かさず同じ会社の社長が一喝。

「おい、C君、E社様は、もう、条件次第で購入頂けると言われているのだ。なぜ、今、ご購入の動機を今におよんで伺わなければならないのだ? そもそも既にご決断頂いているE社様に失礼だぞ!」


 このようにピントの外れた質問をする人が、社内外の会議では必ずいます。どういうわけか、有名大学出身者に多いのです。

日本の偏差値教育の観点からすれば、頭はいいのだと思います。が、ビジネスで一番大事な、場や雰囲気を読み取る繊細さがないのです。


 商談など交渉の場で質問を聞いていると、質問者がどのくらいできるかがよくわかります。つまり、質問に力があるか否かでわかるのです。質問に力があれば、話はどんどん進みます。逆に、ダメな人が質問すると、紹介して例のように、質問内容によっては、人間関係が一瞬にして壊れ、できたはずの取引もダメになります。

 会社や組織に入ったから、突然「質問力」がつくわけではありません。普段から、話を前向きに促進する「質問力」をつける努力をすることは、社会人として大事な訓練となるのです。