「『ダメ社員』だから本格的に頑張り始めたら、『凄い社員』になれる」



「できる社員」のほとんどは、元々「ダメ社員」だったのをご存知ですか?

 私の知る限りでは、最初から「できる社員」だった人は一人もいません。それもそのはず、最初は新人ですから、皆、右も左もわからないのです。

 であるなら、なんで差がついてしまうのでしょう?

 一言で言うと、「できる社員」になることへの執念だと思います。将来の夢や目標を達成するためには、まず周りから認められる「できる社員」にならなければ話になりません。

 ですから、今おかれた環境で目の前のことで結果を出していこうとするのです。


「ダメな社員」ほど頑張り始めたときの底力は凄いものがあります。

 なぜか?

 それは、まさに破れかぶれの必死に仕事に取り組むからです。時には殺気を感じさせられることもあります。


 昔アメリカ人社員にも、そんな「凄い社員」、E君がいました。

 ある日いきなり手紙が届いたのです。手紙の主は、卒業を間近に控えた大学四年生のE君からでした。ぜひうちの会社で働きたいとのことだったので、早速面接をしました。

 会って5分も経たないうちに痛感しました。

(こりゃダメだ。思い込みは激しいし、社会人として常識がなさ過ぎる、と)

 父親は会社を経営している俗にいう「ボンボン」です。

低調にお断りしようとしたら、いきなり土下座です。日本に留学(遊学?)していたこともあったため、土下座の効果を知っていたのでしょうか。

「ぜひ、貴社で働かせて下さい! トイレ掃除でも何でもしますから」

「ちょっと、土下座は止めて下さい! 困りますから。そのやる気は有り難いのですが、うちは経営コンサルティング会社なので、根性だけではダメです。失礼ですが、社会人としての常識豊かな人しか採用しないようにしています」

「社長さんの期待に必ずお応えできるよう、これから勉強します」

「申し訳ないですが、これから教えなければいけない人を、給料を払ってまで雇えません」

「社長が使えると思えるまで、交通費も給料も一切いりません。1年でも2年でも。なんとか雑用係として置いて貰えませんでしょうか? お願いします!」

「え! 1年も2年も? その間の生活費はどうするの?」

「開いている時間に他で土方でも何でもしますので、何とか手伝わせて下さい!」

 それでまた、土下座を始めるのです。困った私は、一時しのぎもあって、苦し紛れに言いました。

「じゃあ、言われたように交通費も報酬も一切出せませんが、もしそれでよければ、とりあえず、一日だけインターンとして来てください。ただし、続けて来てもらうかどうかは、その後決めます」

「ありがとうございます! 続けて置いて頂けるよう頑張ります!」

 こんな妙な会話でE君との付き合いはスタートしたのでした。


初日のインターンが終った時、仕事は案の定できはしませんでしたが、E君があまりにも一生懸命やるので、雑用担当インターンとしてはいいかと思い、しばらく来てもらうことにしました。

 確かにE君は当初気が利かないし、非常識極まりない言動が目立ちました。基本的には、私と同じで仕事センスと頭が悪過ぎるのです。でも、なんだか昔の自分を見ているようで、とても親近感を覚えました。おそらく、今まで採用してきた人の中で、間違いなく「ダメ社員」度はナンバー1です。

 しかし、そのE君が、メキメキと力をつけ、正社員となり、遂には最年少でマネージャーになったのでした。

 その後、父親が病気で倒れたため、後を取るためうちを辞めて田舎に戻りました。今は父親が起こした会社の社長をしています。

驚いたことに、E君が社長になってから、潰れかかっていた会社は回復し急成長し始めたのです。今では規模も業績も4倍以上で、我が社よりも大きくなったのです。


 まさに「できない社員」であった人が、保身をなくし体当たりで仕事をしていったとき、「凄い社員」になることを実感する出来事でした。