「コミュニケーションの達人とは、聞き役に徹することのできる人をいう。それも、相手の心を開かせる誠心誠意で」
話し合いで話が上手いと言われる人がいます。
そんな人が周りにいたら、その人が話し合いをするのを、じっくり観察してみて下さい。
実はそんな人は、ほとんど話していないのです。むしろ、聞き役に徹しています。
それでは、なぜ、聞き役に徹するかわかりますか?
相手の話したいことを正確に把握しようとするからです。そうでないと、コミュニケーションのキャッチボールが成り立たなくなるからなのです。
たとえば、二人の人がコミュニケーションを図ろうとしているのに、お互い相手の言うことをよく聞かなかったら、どうなるでしょう?
当然コミュニケーションどこではなくなります。下手をしたら、喧嘩になるか、相手に対して嫌な印象を持ち、二度と話したくなくなるのではないでしょうか。
本物の「できる社員」は、皆コミュニケーションの達人です。
コミュニケーションの達人は、まず相手の言うことを真剣にとことん聞きます。
話す人はいくら言葉で一生懸命表現したとしても、その言っていることは、本心と違っていることが往々にしてあります。意図的な場合もありますが、無意識にそうなっていることがほとんどです。
なぜ無意識に本心でないことを言うのでしょう?
話している本人は、本心を表現しているつもりなのですが、時と場合と話し方などで伝わり方がまったく違ってくるからなのです。
それだけコミュニケーションをとるということは、難しいのです。
私の友人で心理学者をしているアメリカ人は、「話し手の話す内容が、どれくらい正確に聞き手に伝わるか」を、知るために500人を対象に実験したことがあります。
その実験によると、同じ人が同じことを話しても、時、場所、話し合いの参加人数、話し手の心理状況・声の大きさ・調子・体の動かし方、聞き手の心理状況などで、聞き手の受け取り方が、8割も違ってくるとのことでした。
また、聞き手が話し手をじっくり聞いていないと、話の内容の7割も理解されていないことが判明したとのことです。
更に、聞き手が真剣に聞いていないと、話し手の9割が本心を語らなくなることもわかったそうです。
私も米国の経営大学院(ビジネス・スクール)の博士課程まで終えましたが、その調査が正しいかどうかは、専門外ですので判断の余地がありません。しかし、体験的にはかなりうなずけます。
コミュニケーションの現場で同じようなことを何度も経験しているからです。
ポイントは、相手の本心を聞き出した上、正確に理解するのは、とても難しく大変だということです。
まず、誠心誠意の言動を通して話し相手との信頼関係をいち早く構築すること。それで相手の心を開きます。その上、全力で一言一句聞くのです。そして、言葉のみならず、相手の顔の表情、目や体の動きなどのボディーランゲッジにも注意を払うのです。
コミュニケーションの達人とは、まず聞くことで相手の本心を理解し、その相手が心から安心・納得できるように、対話できる人なのです。
「できる社員」と評価を受けている人は、それができています。
上司を含めて職場でとにかく一方的によくしゃべる人がいます。その種の人は、話し合いをリードし、話の流れをコントロールすることから、コミュニケーションが上手に映ります。
しかし、勘違いをしてはいけません。相手の本心を理解するためとにかく聞き役にまわるというコミュニケーションで最も大事なことを無視していますから、実はダメ社員なのです。上司であれば「ダメ上司」と部下からレッテルを貼られるでしょう。
そんな人の話は、真剣に聞く価値はありません。ただ、喧嘩をする必要もないですから、適当に相槌を打って聞き流せばいいのです。自己満足でダラダラしゃべっているだけですから。聞く人が聞けば、我儘で内容のないことを言っているのはすぐにわかります。