「雑用を軽視する者は、仕事で泣く。なぜなら、雑用も誰かがやらなければならない会社にとって必要な仕事だからだ。そして、小さいことをバカにする人は、小さいことの積み重ねである大きなことはできない」

 私は、新人社員だった頃、あまりにも仕事ができなかったため、コピー取りやお茶入れで代表される雑用係に自然とさせられていました。

 経験・知識・能力がないことを自覚していた私にしてみれば、夢にまで見た憧れの大手国際会計・経営コンサルティングに奇跡的に入れてもらったのですから、クビにならないだけでもましだと思い、会社や上司には感謝しました。

 一方いつまで経っても、一人で仕事ができず職場で足手まといになっていることで、会社や周りの人に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 そのお詫びと感謝の印として、どうせ雑用係をやるならば、皆に喜ばれるよう「雑用のプロ」を目指す。そして、その道で、職場でナンバー1になれるよう日々工夫・努力することにしました。

 雑用を通して、皆への気遣いを徹底させました。

具体的には、よりきれいで読みやすくなるようコピーをしたり、毎日できたてのおいしいお茶やコーヒーがいつでも出せるよう体制を整え、準備していました。

 お陰で顧客・上司・先輩から大好評で、大変喜ばれた。その結果、とてもかわいがって頂きました。

「浜口は何事も全力でやる誠実なやつだ」とか「皆がいやがることを率先してやる骨のあるやつだから、そのうち仕事でも頼りになるに違いない」と、まだ仕事でお荷物状態だった私なのに、気遣いが功を奏して、評価されるようになりました。

 そんなわけで、仕事もろくにできないうちから、徐々に昇進させて頂いたのでした。

 当時の私にとっては。自分が雑用を徹底してやることで、昇進していくのが、とても不思議でした。

 他の部署の人達が異様な目で私を見始めた時、なんだかいたたまれなくなりました。それで、遂に上司に聞いてみたのです。

「すみません、どんどん昇進頂けることは、とても嬉しいのですが、他の部署の人の厳しい目がとても気になります。こんな実力のない私が昇進させて頂いていいものなのでしょうか? 私より頭が良く、仕事ができる人は、今いる部署にもいっぱいいますが……。仕事ができないのに、本当にこのまま上司として、部下を引っ張っていっていいのでしょうか?」

 そうしたら、上司から意外な言葉が返ってきました。

「確かに君の部下達の方が君より仕事はできるかも知れない。しかし、私が君から求めているものは、仕事より、人間関係のマネジメント力だ。雑用をあれだけ上手くこなし、周りの皆から感謝・評価され、一人ひとりとしっかり人間関係を構築できたのだから、マネージャーとしてまったく問題ない。むしろ、仕事ができても人間関係マネジメントができない人より、向いているよ! 専門的で細かい仕事は、できる部下達にやってもらえばいいじゃないか。部署の皆で力を合わせて成果を出せばいい。今まで通り頼むよ!」

 その時痛感しました。仕事で成功するためには、仕事ができることも大事ですが、それ以上にどんな人に対しても気遣いができる、人間関係マネジメント力と、周りの人を魅惑する人間性はもっと重要であることを。

その確信を得て、私はそれまで以上に人に対する気遣いに力を入れていきました。

 結果的には大して仕事ができないのに、どんどん出世させて頂き、気がついたら役員待遇になっていたのです!

 ですから、今でも私は時ある毎に、社員に強調します。

「ビジネスでの成功のカギは、能力ではありません。そのビジネスに関わる一人ひとりへの気遣いです」と。