「聞くは一事の恥、聞かぬは一生の恥」
昔から、よく言われる言葉です。
この言葉を初めて聞いたのは、小学校5年生の時でした。担任の先生が口癖にしていたのです。
当時、なんで聞かないと一生の恥になるのかわかりませんでした。
しかし、社会人になってからは、この言葉の重みを毎日のように、痛感するようになったのです。
わからないのに面倒くさくて聞かなかったり、聞くのが恥ずかしくて知ったかぶりしたため、何度もミスや失敗を犯していました。
経験している方も多いと思いますが、真剣に学ぼうとすればするほど、わからないことがどんどん出てきます。新しいことを学ぼうとしているのですから、わからないのは当たり前なのです。
逆に学ぶ気持ちがなければ、わからないことが何であるのかすら気づかないのです。
ですので、わからないことが出てくること自体、またそれを知ろうとすることは、やる気の現れですから、いいことだと言えます。
大事なことは、できるだけ早くわかるようにすることです。わかるようにするには、調べることもいいですが、効率から考えて、聞いた方がいいでしょう。それもその場で。
今では私は、わからないことがあれば、失礼になったり、邪魔にならなければ、その場で聞くようにしています。
相手が若くても、目下の人でも、謙虚に教わろうとします。
いつの時代も、若い人は新しいことに敏感です。従って、年配者よりも若い人の方が、新しい発想・考え方・システム・コンセプトなどをよく学び、知っています。
ですから、どんどん若い人にも教えてもらうべきです。特に最新技術に関しては、若い人でなければ、理解できないことも多いものです。
大手国際会計・経営コンサルティング会社に新卒で入社して約1年後、クライアント先に訪問していた時のことです。打ち合わせ相手である本部長さんから突然ある最新の経営管理システムのことを質問されました。
「浜口先生、プロだから相当知識がおありになると思いますが、『XXX』という新しいシステムありますよね。弊社で今そのシステムの導入を考えているので、ちょっと教えてもらえますか?」
正直言って、そのシステムは全然知りませんでした。初耳です!
しかし、経営管理システムなら、何でも知っているはずのコンサルティング会社のプロフェッショナルということになっていましたから、とても知りませんとは言えません。
ですから苦し紛れに言いました。
「あ~、あの最新の『XXX』ですね。私も今勉強しているところです」
勉強中ということで、なんとか上手く逃げようとしたのですが、その直後悲劇が。
「今勉強されているのですか。それは丁度いい! それでは、今担当部署のメンバー15人を呼びますから、既に勉強されたことだけでもいいですので、1時間程度講演して下さい。ぜひお願いします」
「え! 今ですか? はあ……」
「はい、そうです。浜口先生なら朝飯前ですよね! お願いします」
私は困り果てました。既に今日は時間があるので、何でも相談に乗りますと伝えていたのです。時間がないからできないという理由はもう通りません。
どんどん脂汗が出てきて止まらなくなりました。胃もキリキリしてきて、葛藤していると、ダメ押しの言葉が。
「そんなに硬く考えないで下さい。講演と言っても、社内メンバーだけですし。彼らにもそろそろ本格的な勉強を始めてもらいたいので。先生なら簡単でしょう。こういう無理なお願いもできることもあって、高額の顧問料を毎月お支払いしているのですから」
高額の顧問料! 高額になったのは、依頼されたコンサルティング・プロジェクトが、大変時間がかかるからで、結果的には格安でした。
その殺し文句が出たなら、とにかく何が何でもやらなければなりません。でも、そのシステムについて、教えることなど、何もないのです。そもそもまったく知らないわけですから。こちらから聞きたいくらいです。
そんなことを考えたら、段々気分が悪くなって、吐き気がしてきました。顔色も真っ青です。
そして、私は一言。
「申し訳ありませんが、今は体調が悪いので、その講演は次回にさせて頂いてよろしいでしょうか? 次回は必ずやりますので」
嘘から出た誠とでも言うのでしょうか。本当にどんどん体調が悪くなっていき、最後は座っているだけでも辛く感じられるようになりました。なんとかその本部長さんには納得してもらい、次回に講演することになりました。