「文章を書けば洞察力と思考力が高まり、自分の考えや物事の本質が見えてくる。最終的には問題解決能力も向上する」
私は長い間自分の不器用さに悩まされてきました。一つのことをすれば、他のことがまったくできなくなるのです。
それはとても困ることです。なぜなら、世の中沢山のことが同時に起こるため、上手に生きていくためには、我々も同時に多くのことに対応していかなければならないのです。
それができなければ、人間失格です。
ですから、私は長い間人間として失格でした。
昔日々様々な人から色々なことを頼まれた時、既に何か一つやっていれば、考えもせず、その場ですぐに断っていました。
「あー、今違うことを一生懸命やっているので、他のことをしている余裕はまったくありません。ですから、お断りします!」と。
こんなことを周りの人達に言い続けていたのですから、かなりいやなやつと思われていたに違いありません。
周りの人達は、ちゃんと沢山のことを同時にこなしていました。ですので、いかに私が不器用であるかは、自分自身わかっていました。
それでも、私には物事を同時にこなす能力がないと思い込んでいました。だから、「人は人、自分は自分」と、不条理を承知で割り切っていたのです。
しかし、社会は厳しいものです。そんなことをしていたら、誰からも相手にされなくなりました。遂には、哀れに思われ始めたのです。
「融通性のないにもほどがある! かわいそうに、あいつは人生の負け犬だ!」
そんな声が間接的に聞こえてきて、真剣に悩みました。
「確かに、一つのことだけやっているのは、今の自分にとっては楽だ。しかし、一人だけで生きているわけではないから、他人からも理解され認められないと、どんどん孤立していく。結局人からの助けが貰えなくなって困っているのは自分じゃないか! とにかくこのまま一つだけのことをやっていくのは、よくないよなあ。おそらく破滅するだろう。どうしよう? なんとかしなければ……」
なぜ、一度に一つのことだけしかできなかったか?
理由は、本当に不器用でしたので、他のことを同時に始めると、頭が混乱して管理できなくなるのです。場合によっては、そのストレスで、気が狂いそうになるのです。
それで、メンターにアドアイスを求めました。
「どうしたら、多くのことが同時にできるくらいの能力を高められるのでしょうか?」
「迷ったり、問題が出てきたら、まずそのことを書いてごらん。書いたら迷っていることや問題の本質、そしてそれらに対する自分の考えが明確になってくるから。書かないときにわからなかった本質が、書くことで見てくる。本質がわからないから、解決策が見えず、迷い悩み続ける」
それから私は悩んだり、問題が起こったら、必ずそのことを書くことにしました。
そしたら、メンターが言われたように、自分の考えや物事の本質が明確になっていきました。
文章を書き始めてわかったのですが、書けば洞察力と思考力が高まります。そして、表面的なことに振り回されることなく、問題を深く掘り下げることができるのです。従って、問題解決能力がどんどんついていきました。
そのお陰で、徐々に複数のことが同時に考えられ、処理できるようになりました。
勿論、自分で腹を決めて複数のことに挑戦し始めたのです。
しかし、書くことによって、一つひとつのことが鮮明に整理され見えてきたのです。ですから、思ったより同時にやることは、複雑でもなければ、苦でもなくなったのです。
また、何事においても書くことで、いかに自分がいい加減に考え、いい加減に言動してきたかが明確になっていきました。ということで、書けば書くほど、謙虚にならざるを得ないのです。
「こんなことも、頭の中でこんがらがっていたのか! 一つひとつ書いて整理していけば、大したことじゃあないのに。どうしてもっと早く書くことの大切さに気がつかなかったのかなあ……」
今では、何かあればすぐにどんどん書くようになりました。
書くことで手先フルに使うため、脳に刺激を与えているのが実感できます。
また特に、自分の気持ちや考えを相手に伝えなければならない場合、できるだけ手紙を書くようにしています。
手紙を書くと、相手や物事に対する自分の気持ちの整理にもなります。その上、謙虚に自分を見つめ直すことができるいいエクササイズにもなっています。
手紙には不思議な力があって、心を込めて書けば、相手に伝わらないことは、ほとんどないようです。手紙を真剣に書くようになって、私はそれを何度も経験しました。
ですから、忙しい人やなかなか会えない人と、心のこもったコミュニケーションをとりたければ、どんどん手紙を書くことをお勧めします。