「虚業」とは、一般的に堅実でない事業とか、実を伴わない事業を指します。一方、「実業」とは、その反対で、農業・工業・商業・水産などのような生産・経済に関する事業を意味します。

 ところが、世間では今、この境界線がなくなってきているようで、混乱を招いているのです。

 例えば、金融業は、お金を商品としたことがれっきとした本業であるビジネスです。複雑な形態をとることが多いので、非常に優秀な人達が携わる分野でもあります。しかし、やり方によっては、「マネーゲーム」として、「虚業」扱いされ、非難の対象になっているのです。

 先般のライブドアによるニッポン放送の株の買占めや「村上ファンド」による阪神電気鉄道の株の大量取得などは、その部類です。株式市場と規制の急変を逆手にとったやり方で、まさに短期間で楽をして大儲けをしようとする「マネーゲーム」として批判されました。

「虚業」と「実業」の違いをはっきり区別するのは、非常に難しいと思いますが、私なりの区別の仕方があります。正しいかどうかは別にして、ポイントはカバーしているつもりです。

 その区別の仕方とは、世の中のためになっているのか、また、正しく稼いでいるのか、です。この二つが満たされていれば、私は「実業」と見なしています。どんな業種であれ。

 もし二つのうちいずれか、また両方とも満たされていなければ、「虚業」といえると思っています。要するに、私の中での「実業」の定義は、その事業をすることで世の中のためになり、正しく儲けていることなのです。

 それ以外は、「虚業」としています。

 ですから、「実業」は、世の中から評価され受け入れられるため、長期間ビジネスとして成り立つのです。世の中から必要とされているわけですから、価格設定や提供方法を間違わなければ、長続きするのは、当たり前ですよね。

逆に、世の中から批判されたり、長く続かなかったりするものは、「虚業」です。文字通り「業を虚しく」しているのです。世の中に貢献している実体がないのです。