米国にいた際、ある経営者の紹介で、ゴルフ場開発・運営業で大成功し、大富豪となった、クラブ・コーポ・インターナショナル(CCI)社創業者のロバート・デッドマン会長(当時)にお会いしました。

企業経営に関する考え方で、すぐに意気投合し、彼からの依頼で顧問としてCCI社のお手伝いをすることになりました。

ある時デッドマンさんの講演会があり、私も彼の生き様を学びたくて、受講していました。そしたら、講演が終わる直後に、ある若者が彼に質問しました。

「どうしたら、あなたのように沢山稼いで大金持ちになれるのですか?」

「人それぞれ方法があると思いますが、私の場合、何もなかったので、人格を磨くことに専念しました。今でもまだまだですが……」

 デッドマンさんの意外な回答に、場内が静まり返りました。

デッドマンさんは、かなりのやり手として有名でしたので、おそらく受講者は、もっとテクニカルな金儲けの方法論やノウハウが聞けると思ったのでしょう。

 答えはきわめて真面目で、お金儲けと直接繋がるのかどうかわからない内容である「人格を磨くこと」だったのです。

 それを聞いて、私は納得できたのでした。なぜなら、私は大富豪に会う度に同じ質問をし、同様の答えを聞いていきたからです。

そのため、「人格がお金を呼ぶ」というお金の法則を見出したのです。

確かに、人格者と言われている人は、お金に困ったという人を、私は一人も知りません。たとえお金で困りそうになっても、周りの人がほっとかず、必ず助けてくれるのです。

そもそも人格者は、私欲や所有欲がありません。ですから、お金に対して執着がないのです。まさに、「金は天下の回り物」を要所要所で体験しているのです。

実際に、デッドマンさんも、お金儲けをしようとして事業を始めたのではなく、自身の経営哲学が正しいかどうかを試したくて、弁護士という高収入の職業を捨ててまで、起業の道を選んだのでした。

従って、彼にとって生活ができる程度の収入があれば十分で、それ以上の金儲けはまったく興味がなかったそうです。

ただ、やるからには、彼を支えたり応援してくれたりしてくれた人々に報いたいと思い、恩返しする意味で、創業以来休みもなく一心不乱で一生懸命働き続けたそうです。

その結果、事業で大成功されました。

しかし、彼は亡くなる直前に、残された家族が一生生活できる程度のお金だけ残して、後のすべての資産を、大学、病院、慈善事業団体などに寄付したのでした。

そう言えば、先日も、米国の著名投資家で世界第2位の富豪としても知られるウォーレン・バフェット氏は、約370億ドル(約4兆3000億円)をマイクロソフトのビル・ゲイツ会長夫妻が創設した財団「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金」などに寄付すると発表しました。総額440億ドルとされる自分の財産のうち、8割以上に当たるとのことです。

やはり、欲のない人格者には、お金は集まり、欲のない故に、その集まったお金も、結局、世のため人のために社会へと還元させるのです。

そんな生き方を見習いたいものです。